年金を「確定給付」から「確定拠出」に移行させる狙い

それだけではない。

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会社の将来の負担を回避するために(1)確定給付年金の一部あるいは全部を(2)確定拠出年金に移行する企業も増えている。

確定拠出年金は、会社が指定する金融商品のメニューから社員が自分で選んで掛け金を投じて運用する。会社は掛け金を“前払い”の形で拠出するだけで会社が損失を穴埋めする必要がないというメリットがあるからだ。

前述した人事院の調査では確定拠出年金(企業型)がある企業は2011年の24.7%から37.7%に増加している。大企業が多く加盟する経団連の調査では57.4%の企業が導入している(2017年6月)。加入者の数は632万3000人である(企業型、17年8月末時点)。

しかし、問題は個人でしっかりと運用できているかである。確定拠出年金は運用次第で老後の資産を増やせるメリットがあるが、損失が発生すれば個人の責任となる。

しかも一定の利回りを確保できていたとしても本来もらえるはずの退職金額に届かない可能性もある。確定拠出年金の導入にあたって会社側は「想定利回り」を設定し、社員の支給する「掛金額」を決める。つまり、想定した利率通りに社員が掛け金を運用すれば、定年退職時に払うべき退職金に見合うようにと計算しているのだ。

その想定利回りの平均は1.98%(企業年金連合会調べ)だ。2%を上回る利率で運用しないと確定拠出年金のうまみはなく、確定給付年金だったらもらえたはずの年金額に届かないことになる。

運用利回りが低くても「それは自己責任」

では、実際の運用状況はどうなっているのか。

企業型確定拠出年金の大手運営管理機関が集計した2017年9月末時点の加入以来の通算利回り(4社平均、加入者の55%)は3.39%となっている(「年金情報」格付情報投資センター)。このうち利回りがマイナス、つまり掛け金が「元本割れ」の加入者は1.4%とさすがに少ない。

しかし、利回りが2%以上の加入者は53%しかおらず、約半数が想定利回りを下回り、利回り「0%以上~1%未満」が最も多い。

そのほとんどが運用に関心がなく、預金など元本確保商品を選択しているためと推測される。株価が上昇し、運用環境が良好にもかかわらず、退職金の目標金額に到達できていない人が多いのが実態なのである。

会社側は「自己責任だ」と言うかもしれない。しかし、確定拠出年金の導入を社員が望んだわけではない。このままだと退職金・企業年金の減少に歯止めがかかることはないだろう。老後破産は大企業の社員も例外ではないのだ。

(写真=iStock.com)
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