「1日3時間の勉強でも受かる」と信じていた

通勤電車で判例集を読み、出社前には職場近くの喫茶店で1時間勉強。授業に間に合うよう17時半に退社することもあった。しかし、日中は従来通りの仕事をしていたため、社内の誰も通学していることに気づかなかったという。「学校へ行かなくなると、勉強しなくなる。受験のチャンスは卒業した年の1回だけ」と決めていた植田氏は、合格する勉強法を求めて、2年目は土曜日に予備校へも通った。

「昼間のクラスの学生は1日15時間勉強できますが、私の場合、多くても平日で2、3時間程度。短時間で結果を出すため、勉強の範囲を絞りました。ある先生が話していた『新司法試験は旧司法試験のように学説を覚える必要はない。条文と最高裁の判例を読んで、答案を書く練習をすればいい』という意見が正しいと思ったので、その方法だけをやりましたね。

若い学生に比べて、衰えや不利を感じることは全くなかったです。『自分のほうが社会経験を積んでいるんだから、1日3時間の勉強でも受かる』と信じていましたから。『年をとるとやっぱりダメだな』という言い訳をしてしまう人は、もう受からないと思います」(同)

植田氏は2年コースのロースクールを卒業した年、晴れて一発で司法試験に合格。その後、司法研修生とコンサル勤務を経て、54歳で弁護士として独立したが、ここからが正念場だったという。直前まで勤めていたコンサルでは大企業の案件を担当していたが、弁護士1年生は大企業からは絶対に相手にしてもらえないと考えていた。そこで過去の人脈に頼らず、一から中小企業や個人の人脈を開拓していくことを決意。商工会議所の交流会に顔を出し、何とか仕事を立ち上げることができた。

「周囲を見ていると、私のように中年になってから司法試験に合格した人がいました。でも、ほとんどの人は弁護士として独立することには躊躇しています。定年になったら始めようと考えているのでしょうけど、世の中そんなに甘くはありません。資格を取った後、仕事として立ち上げられるかどうかが本当の勝負。仕事にならなければ、資格なんて宝の持ち腐れです」(同)