幕末から明治にかけて、日本には莫大な財を成した4人のイノベーターがいた。彼らはどこが違っていたのか。雑誌「プレジデント」(2018年2月12日号)の特集「仕事に役立つ日本史入門」より掲載記事を全4回で紹介しよう。第3回は「安田善次郎の利益を生み出す力」について――。

新貨幣を買い占め、巨大な利益を得た

みずほフィナンシャルグループの礎を一代で築いたのが、安田善次郎です。生家は富山藩の貧しい最下級武士。21歳で江戸に出て、玩具などの店で丁稚奉公。いくつかの職を経て両替商を開業し、大銀行家となりました。

なぜ、ハダカ一貫で幕末から明治、大正という激動の時代を生き抜き、日本一の金融王にまで“成り上がる”ことができたのか。ポイントは3つあります。まず1つ目は、人々が驚くほど「大きな目標」を立てたことです。

「自分は千両の分限者になる」。これが善次郎の口ぐせです。分限者とは、金持ち、資産家のこと。善次郎の家は武士の身分を買い、武士階級にもぐりこんだ「半士半農」。貧しさゆえ、善次郎も農作業や野菜の行商で家を助けました。読み書きそろばんに秀でた善次郎は、写本の仕事もこなしました。その中で、豊臣秀吉が天下統一を果たす物語『太閤記』を読み、「自分も秀吉のような存在に」と志を抱くのです。その強い気持ちは「本物」でした。