採用側は転職者から「業務の改善」を期待していない
入社したての新人も含めた20代に最も大切なのは「気遣いとコミュニケーションを学ぶこと」。一生の財産になる、と海老氏は言う。
朝、少し早めに会社へ行き、出社してくる社員一人一人に挨拶すると、会話のきっかけも生まれる。自分のことを話すより、相手のことを聞く姿勢が好感を持たれる。
「言われなくてもレポートを作るといい。上司が嫌がるのは、来て間もない部下が毎日何をしているのかわからないこと。当面は『今日、こういうことを頼まれました』『明日はこういうことをやる予定です』などと書いて“見える化”すれば、上司も安心します」(海老氏)
社会人10年超の30代ともなれば、転職も仕事の力量と経験を買われてのものとなる。近年は、中小企業やベンチャー企業から大企業に転職する20代、30代もいる。新規事業の開発などで、若く特別な技能を持つ人材を求める大企業が増えてきたからだ。
「ただ、中小やベンチャーと違い、大企業では物事が決まるスピードが遅く、そこに戸惑い、不満に思う方も多い」(三上氏)
大切なのはそこに「早くなじむこと」だが、転職前からそれに備えておくといい、と三上氏。
「転職は人生に何度もない。しかし、今いる社内にはたくさんの転職経験者がいるはずです。転職する自分と社内の転職者は、合わせ鏡のようなもの。彼らから、どのように会社になじもうとしてきたか、また何が難しかったか、何をしてもらって助かったかなどを聞いておくのもポイントです」(同)
仕事ができる若手ゆえの落とし穴にはまらぬためにも、それは必要のようだ。
「とかく転職者は、前の会社と転職先を比べ、批判的に見てしまう。転職してすぐ悪いところを指摘するのは、今後の自分の居場所を否定することにもなりますし、そもそも業務の改善など、採用側は期待していません」(海老氏)
採用側の期待は、今ある状況の下で成果を上げること。一方、改善には根拠と時間と、共感してくれる仲間が要る。転職先の内情をろくに知らぬうちに何かを提案しても、通るわけがない。
「基本的なことですが、何をすれば自分の幸福と組織への貢献に繋がるのかを考えることが大切。しかし、キャリアを積んだ人でも、意外にそういう視点を持っていませんね」(同)
転職先のいいところを見ていくクセをつけよう、と海老氏は言う。そこからその会社の社会的な価値も風土も見えてくる。改善の提案は、職場になじみ、上司や周囲の信用を得てからにしたほうがいいだろう。