まず施設で人気があるのは、いわゆる特養と呼ばれる「特別養護老人ホーム」だ。比較的価格が安く、死ぬまで面倒を見てくれるため安心でもある。しかしこれは圧倒的に施設の数が足りていない。よほど介護度が高いか、コネでもない限り、数年待ちを覚悟しなくてはならない。次に「老人保健施設」(老健)だが、こちらは基本的に治療後のリハビリ施設のため、最長でも6ヵ月間しかいられない。そのため老健A→老健B→老健Cと、半年ごとにグルグル移動しながら特養の空きを待ち続ける人も多い。「療養型医療施設」という選択肢では、医療的な管理を必要とする人が入る施設なので入居できる条件がさらに限られる。しかも前政権では一度廃止が宣言されているので、今後どうなるか見通しは立っていない。
グループホームという選択肢もあるが、こちらは認知症の人しか入れない。
つまり施設の場合、選択肢はありそうでないのである。では公的施設以外では何があるのか。残る選択肢は「介護付有料老人ホーム」である。こちらは「第二の人生」「終の住処」を謳い多くの民間業者が参加しているだけに、施設の充実度、介護の手厚さが期待できる点がメリットとして挙げられる。ただ難点は、かなりの出費を覚悟しなければならないこと。
東京都の区役所で福祉課に勤めるA氏は介護費用を大まかにこう計算する。
「有料老人ホームもピンからキリまであるため一概にはいえませんが、最低でも月額20万円台の支払いのほか、さらに入居一時金として150万から、多い場合は2億円まで支払うところもあります。
もちろん介護サービスの自己負担額は他の施設や在宅と同様に費用の1割ですが、支給限度額を超えた分は全額自己負担となるため、その分が相当かかります。
公的施設の場合、介護サービスの自己負担額は月額2万~4万円程度です。さらに別個に居住費と食費などが月額10万~13万円ほど加算されますが、大体ひと月12万~17万円ほどで収められます。それに対して有料老人ホームは事業ごとに価格設定しており、サービスと価格は詳細に調べる必要があります」
もっとも、有料老人ホームが高いのにはそれなりに理由がある。公的施設より居住空間として居心地の良さを追求したインテリアや、プールや娯楽施設の充実度、栄養面に配慮されたおいしい食事に様々なサービス。これらを賄うためにコストがかかるのは当然だ。