だがときに落とし穴も潜む。施設の経営母体の経営悪化に伴う閉鎖などのトラブルである。何千万円も支払った入居金を返還されることなく、「終の住処」だったはずのホームを追われる高齢者もいる。
「有料老人ホームの経営母体には不動産業者など異業界からの参戦も多いのですが、いまは景気も良くないため、本業の経営不振がそのまま老人ホームにも降りかかり、ほかに売却してしまう例も出ています。次の事業主が再び老人ホームを経営するならばまだしも、そうでない場合、入居者は退去を余儀なくされることもあります。あるいは新たな事業主に再び入居金を支払わされたりすることも」
実は有料老人ホームは、居住権ではなく利用権方式で運営されている。利用者が購入できるのは、その施設を利用できる権利のみ。仮に事業者が倒産した場合そこに住み続ける権利はないのだ。入居者を保護する法律も現在はまだなく、有料老人ホーム協会に加盟している場合は多少の金額が保証されるが、それも微々たるものだ。退職金をはたき、自宅を売却したなけなしの金で購入した人生の片道切符が、一瞬にして消えてしまう危うさが、有料老人ホームには潜んでいる。
家族対応次第ではすぐに施設へ!
(家族対応あり)介護度1~2では介護保険内(月3万円以下)の料金で在宅生活ができる。介護度3では、多少の出費で在宅が可能。介護度4~5は、家族が相当の負担をしたうえで、介護保険外サービスを月額10万円以上を使う必要があるが、実際例は相当数ある。
(家族対応なし)介護度が1~2では、多少の財産で十分に在宅が可能。介護度3は、高額な介護保険外のサービス利用で在宅も可能だが、不安が残る。介護度が4以上では、裕福な家庭でも在宅は厳しい。
※すべて雑誌掲載当時
(小倉 和徳=撮影)