介護保険の利用者負担は1割のみ(残りの9割のうち、50%は40歳以上が納めている介護保険料が、残りの25%を国が、さらにその残りの12.5%ずつはそれぞれ都道府県と市区町村で賄っている)。そのためきちんと保険内で頼める介助をケアマネージャーと相談すれば在宅でもやっていけるというのだ。仮に介護保険料で賄えない分を自腹でお手伝いさんを雇うとしても、月に10万円もかければまずまず補える。年間にして120万円。仮に10年間在宅介護をしても1200万円ほどでいける計算だ。都内の有料老人ホームに入居する標準ケースの概算より5000万円は安くなる。
ただ金銭面で抑えられる分、家族の負担は当然ながら大きくなる。そこが在宅のデメリットだ。介護保険やヘルパーはあくまで補助的な役割で、介護するのは基本的に家族というのが在宅介護の考え方だ。そのため日中家に誰も家族がいない場合や、完全独居の場合、在宅介護はまず不可能だと考えたほうがいい。
では家族にとって、もっとも介護が大変になるのはどのような場合だろうか。
「それは、体は元気なのに認知症だけが進んでしまっている場合です。これは介護度5で寝たきりの方よりもきつい。かつてご自宅にマクドナルドのマークの入った灰皿と紙ナプキンが大量にあり、そして毎日それが増え続ける方がいて対応に苦慮していました。しばらくするとお店から連絡があり『当店で下半身を露出されては困ります』と出入り禁止となり一件落着しました。また、風呂場で『あら。なんで私、服を脱いでいるのかしら?』と着脱を繰り返す方もいます。そんな毎日に神経がすり減ってしまい、最終的に施設を選ばれるご家族もいます」
「表現はよくないかもしれませんが」と付け加えながらも、宮本氏は「介護は、金銭を取るか苦労を取るかといった究極の選択」になってくるという。
しかし問題は、苦労に耐えかね施設を選ぶことになった場合、利用者が選べる選択肢が現状では非常に限られていることだ。では施設にはどのような種類があるのか、簡単におさらいしてみよう。