「そんな事例は一部にすぎない」とフタをするな

子どもを守り育てるための学校教育や校則が、子どもの安全や健康を損なっている。そんな学校やクラスは、全国的にはほんの一握りであろう。2018年7月の痛ましい小学1年生の事故も、全国的に起こっているものではない。また、日焼け止めを禁止している学校も、少数派であろう。

荻上チキ、内田良・編著『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』(東洋館出版社)

このようなとき、「そんな事例は一部にすぎない」という反論が聞こえてくる。とりわけ、学校教育にいそしみ、校則指導に日頃から取り組んでいる教師にしてみれば、一部を誇張した話は耳障りに感じるかもしれない。

だが、「一部にすぎない」という見解は、「だからそれにはフタをしましょう」という主張と同義である。仮にほんの一部の子どもや教師にしか当てはまらないことであるとしても、そこにいる当事者にとってはそれが大問題であり、いますぐにでも改善されるべき状況である。フタをしてはならない。

今こそ、教育のリスクをとらえなおし、学校の安全・安心を見直すべき時だ。近刊の編著『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』(東洋館出版社)では、そうしたリスクを具体的に論じた。ぜひ参考にしてほしい。命を失った小学1年生の児童のような悲劇を、二度と引き起こしてはならない。

内田 良(うちだ・りょう)
名古屋大学大学院 准教授
1976年生まれ。名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士課程修了。専門は教育社会学。ウェブサイト「学校リスク研究所」を主宰し、また最新記事をYahoo!ニュース「リスク・リポート」にて発信している。著書に『ブラック部活動 子どもと先生の苦しみに向き合う』(東洋館出版社)、『教師のブラック残業 「定額働かせ放題」を強いる給特法とは?!』(学陽書房、共著)、『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』(光文社新書)、『柔道事故』(河出書房新社)などがある。ヤフーオーサーアワード2015受賞。Twitterアカウントは、@RyoUchida_RIRIS
(写真=時事通信フォト)
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