人材争奪戦の中、ダイヤモンドの原石をいかに見つけるか

正解者は255通の応募でわずか13名だった。正解がわからなかった人は、応募をそもそもしてこないと考えられるから、実際はほとんどの人がわからなかったといえよう。そんな中、ここでご紹介させていただいた方を含めた13名の皆さんに賛辞をお送りしたい。

これまで本連載で出題してきたクイズは、就職試験でどのような問題を出すかという流れで私が出題したものだった。人手不足が顕著になり、人材の争奪戦が始まっている中で、どうやって将来の組織を担ってもらえる人材を探すか。テクストやマニュアルに載っているような試験を課したところで、そこで優秀な成績を残した就職希望者は、皆、大企業に就職してしまうだろう。大企業が拾えない人たちの中から、ダイヤモンドの原石を探すのだ。

例えば、あなたが商品力も営業力もない中小企業の人事担当だったとしよう。そこで、とるべき採用戦略は、商品開発能力も営業力もあって、人間的にも優れた人材を探すことだろうか。そんなことではないはずだ。もし、そんな人材がいたとしても、大企業にも内定し、そっちへ就職してしまうのは目に見えているのだ。だから、商品開発能力に優れているか、営業力に優れているかというような一芸に秀でた人材を見抜く就職試験を出すべきなのだ。

君に死んだ猫を売ることができるか
「相手にとってまったく無価値、もはや迷惑でしかないものを売ってこその営業マン」と飯島勲氏。自身の幼少時代には、納豆を同級生に売りさばいていたことがあったという。(PIXTA=写真)

商品開発能力に優れた人物を見抜く面接試験でいえば「食への意識の高い住民の住むエリアで、農薬を日本で一番使った野菜に、食品添加物がたっぷり入ったハムを使ったメニューを考えなさい」と問う。営業力に優れた人材を採用したいなら「路上で死んでいる猫を、あなたならどうやって売りますか」と問うのだ。

自分たちがこれから欲しいと思う人材が何かを考え、その能力だけを持っている人材をどうやって見抜くかということに尽きる。

これからの日本を考えたときに、こんな人物になってくれるのだったら採用したいと思う人物がひとりだけいる。それは、自動車メーカー、スズキの鈴木修会長だ。2014年、アベノミクスの恩恵を受けた企業への賃上げ圧力が強まる中、鈴木さんは絶対に「賃金のベースアップはしない」と言い続けた。「代わりに経営陣も報酬を減額する。そんなことよりも軽自動車への課税は弱い者いじめだから取りやめろ」と言って聞かなかった。

鈴木修のような人を見つける方法

世間の風当たりも強まり、社内からも不満の声が聞こえ始めた瞬間に、スズキは「若手と成果を残した社員の賃金アップ」をバーンと発表したのだ(と言っても労働組合が一律3500円を要求し、トヨタが一律2700円を決定する中での800円であった)。

ベアゼロだと思っていた社内はほっと安堵に包まれたという。自分を話題の中心にして、軽自動車への課税を牽制しながらも、あの当時の状況で賃金アップを一部社員のみの800円で納得させてしまう経営手腕には恐れ入った。こんな人物を一回の面接試験で見抜く方法があったら最高だと、私は日々考えを巡らせているのだ。

(写真=PIXTA、iStock.com)
【関連記事】
採用面接で「好きな色は?」と尋ねる狙い
「できる人」と思わせるスマートな質問法
顧客満足V7「コスモス薬品」激安の秘密
"6割が新製品"アイリスオーヤマの企画術
マツキヨが"お試しコスメ"に注力する理由