シラス価格は30倍、仕入価格は3倍に高騰

天然資源としてのうなぎが厳しい状況になるにつれて、小売価格は段階的に上がってきた。かつて三島のうな丼は、ほとんどの店で2000円台だった。それが現在では3000円~4000円台となっている。元祖うなよしも、今年3月、「うなぎ丼(並)」を4000円とした。関野氏は苦しい事情をこう明かす。

静岡県・三島市「元祖うなよし」の外観。

「うなぎ丼の価格は、シラスウナギの『養殖用池入れ価格』で決まるといえます。10年前、2008年当時のシラス価格は、1kg当たり10万~80万円。当店が生きた成魚を仕入れる活鰻価格が1kg当たり1850円で、ウチの店は、うなぎ丼(並)を2100円(税込み)で提供しました。それが、2010年から4年間、第一次シラスウナギ大不漁が起き、シラス価格は30倍までに暴騰。活鰻価格も3倍に高騰しました。このため当店も2014年にはうなぎ丼を3300円、さらに2015年には3500円に値上げせざるを得ませんでした」(関野氏)

関野氏が説明した数字を整理すると、以下のようになる。

・2008年
シラス価格:1kg当たり10万~80万円
活鰻価格:1kg当たり1850円
うなぎ丼(並):2100円
・2010年~2015年
シラス価格:1kg当たり250万~300万円
活鰻価格:1kg当たり5400~5700円
うなぎ丼(並):3300円~3500円

仕入れ価格が高騰するなか、関野氏は利幅を削って価格を抑えたが、間接経費や人件費の上昇も加わり、うな丼は「高値の花」となってしまったのだ。

うな丼は「並で4000円」の時代に突入

今年になって、第二次シラスウナギ大不漁となり、シラス価格は1kg当たり400万円、活鰻価格は1kg当たり6000円となった。全国のうなぎ店が値上げに追い込まれ、元祖うなよしも、「うなぎ丼(並)」を4000円とした。

「三島全体としてお客さまの声で多いのは、『こんな時代だからしょうがないよね』ですが、厳しい声も目立ちます。『うなぎが小さくなった』『以前は家族で来られたけど、もう全員では来られない』『これからはスーパーで買って食べる』という声もありました」

対応に苦慮しているのは専門店だけではない。ファミリーレストランの「ロイヤルホスト」は、持ち帰り限定のうな重について「十分な量を確保できない」として販売中止を決めた。他の飲食店や小売店でも値上げが相次ぎ、その結果“うなぎ離れ”が起きている。ある量販店では、昨年に比べてうなぎの販売額は3割減だという。