接客スタイルの変更にどう対応するか
2つめの提案は「サービスブループリント」です。大塚家具はもともと会員制で、受付から専任アドバイザーが店内を案内する方法を取ってきました。大塚久美子社長が就任後、その接客スタイルを廃止し、誰でも気軽に入ることのできる店舗へと変更しました。この変更は、「ショールームでコンサルタントに相談しながら選びたい」と考える人が1割にも満たないことが市場調査(日本経済社「家具・インテリアに関する調査」15年4月)で示されていることを踏まえると、正しい方向性です。事実、新しい顧客層が来店するようになり、来客数は増加しました。しかし、来店成約率は大幅に減少しました。新しい制度の下で、以前より幅広い顧客層にどのように接客するのか、方法が確立されていなかったためです。
提案したサービスブループリントとは、顧客の行動に合わせて、フロントエンドとバックエンドのスタッフやシステムが、どう連携して動くかを明らかにするためのツールです。顧客に関しては、POSデータ、顧客情報をもとにRFM分析(最新購買日、購買頻度、購買金額の3つの指標による分析)で顧客を分類します。そして、位置情報を検知するツールであるWi-Fiビーコンで顧客の動線、来店回数、滞在時間を可視化し、セグメントごとの顧客像と行動プロセスを割り出します。フロントエンドに関しては、ハイパフォーマーの行動や会話の仕方をIT機器を使って分析するとともに、彼らのノウハウを抽出して明文化し、従業員の行動基準を作成します。バックエンドでは、iPadとWi-Fiビーコンを使いリアルタイムで顧客情報を分析・可視化して、顧客への声かけのタイミング、従業員の最適配置、既存顧客と新規顧客の見極めなどの情報をフロントエンドに伝えてサポートします。
従来は、接客について個人の力量に委ねるところがありましたが、ITを使うことで、誰が接客しても、顧客が大塚家具に求めるサービスの品質を提供することが可能になります。
そして、最も重要と言える提案が、「マス・カスタマイゼーション」です。大塚家具は国内約250社の家具メーカーと取引をしていますが、それらのサプライヤーを含めた変革が必要です。
前述の市場調査から、消費者が家具を購入しない主な理由として「商品価格が高い」「自分の好みにぴったり合ったものがない」の2つが挙げられます。この2つの課題を解決することが、大塚家具復活のカギを握っています。