ちなみに、配偶者の死後、残された方が後を追うように弱り、亡くなってしまう事象は、「Widowhood effect」(未亡人効果)とも呼ばれ、世界中で広く知られています。

未亡人効果を含む、死別、離別の死亡率への影響が、女性よりも男性で強いことを報告しているのは、日本のこの研究だけではありません。実はメタ分析によっても報告されており、男女の違いは世界共通のことなのです。

生活力の差、ネットワーク力の差

死別、離別の死亡率への影響が男女で異なる理由の第1は、生活力の差です。女性は、たとえ死別、離別しても、家事など自分で生活をしていくスキルがあります。配偶者がいなくなったとしても、そのスキル自体は変わりません。一方で男性は、自分で生活するスキルがない場合が多く、死別、離別してしまうと、生活が乱れ、食事や生活リズムといった生活の質が落ちてしまい、不健康に陥ってしまった可能性があります。

『「つながり」と健康格差』(村山 洋史著・ポプラ社刊)

第2に、少なくとも日本では、死別、離別した女性は、そういった男性に比べると遺族年金をはじめ、様々な制度の保障を受ける機会が多くあります。そういった経済的な保障を受けやすいという要素も、死別、離別した女性の死亡率の低さに影響していると考えられます。

第3に、ソーシャルネットワークの男女差が挙げられます。先にも触れたように、男性は、定年退職後に人間関係が一気に希薄化してしまう傾向があります。そんな中、頼みの綱である妻と別れてしまっては、周りの助けを得ることもできず、実際の生活は立ち行かなくなる危険があります。

加えて、気持ちが安らぐ存在である妻を失くした心理的ダメージはかなりのものでしょう。男性は、女性に比べて喪失経験のダメージを引きずりやすく、うつの発症率が高まることが知られています。これらの状況は、間違いなく健康に悪い影響をもたらします。

かたや女性は、友人とのつながりや地域を通じたつながりが比較的強く、死別や離別によって女性のソーシャルネットワークの量自体はあまり影響を受けないといわれています。夫と別れた後も、変わらず人とのつながりを持てていることで、必要な時にサポートを得られることも多く、また気晴らしや楽しみを見つけるチャンスも多いでしょう。こういった特徴が、死別や離別のマイナスの影響を緩和しているのです。

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