社員が滋賀大学データサイエンス学部に研究員として参加

スキルとしては、グローバルなコミュニケーションの道具である英語力は必須です。当グループでは各社TOEICの目標スコアを定めており、そのための学習機会を提供したり、インセンティブを用意したりしています。ちなみにTOEICスコア保有者は、ADでは約1100人ですが、そのうちの3割以上が海外駐在レベルとされている730点以上を獲得しており、満点である990点も複数が獲得しています。

また、当グループは職種を海外赴任のある全域型と、国内だけで業務を行う地域型とに分けていますが、地域型だから英語力は要らないということにはなりません。鎖国をしているならいざ知らず、いまの時代はたとえ国内で仕事をしていても、海外との関わりは必ず出てくるからです。

▼データに関する感度を引き上げる

もうひとつが、ITという道具を使いこなせる能力。この先、仕事というのは好むと好まざるとにかかわらず、人とAIとの協働になりますから、ITのことはわからないとか、苦手だとかはいっていられないのです。さらにITが使えるだけでなく、もう一歩進んで、すべての社員に「データサイエンティスト」になってほしいと思っています。

――「全社員データサイエンティスト」とは?

これから保険会社の命運を握るのはデータです。幸い私たちの手元には、いままでに蓄積した膨大なデータがあります。ところがこの宝の山を事業に活用できているかといったら、そんなことはなかった。損保業界は自由化以前は「護送船団方式」によって守られてきました。自動車保険を例にとると、保険料も代理店に支払う手数料も各社横並びだったので、顧客データを分析してそれを商品に反映させるなどということはやらなくてもよかった。

しかし、もうそんなことはいっていられません。自由化以降、損害保険各社の独自性が出てきているとはいえ、いまはまだ各種保険の参考純率や基準料率(いずれも損保各社が保険料率を決める際に規準とする基礎数値)は、損害保険料率算出機構にデータを提供して計算してもらっています。これからはそれに頼るだけではなく、やはり自らビッグデータを扱えるようにならないと、収益構造を劇的に改善するようなことはできないし、競争力も高まらない。だから「データサイエンティスト的発想」を全社員ができるようにならなければいけないのです。

――データ分析に関する博士号を取得したような高度人材を積極採用するというよりも、社員全員のデータに関する感度を引き上げるということですね。

はい。17年4月、滋賀大学に日本初のデータサイエンス学部が開設されました。そこにADの社員も研究員として参加させています。そして当グループは、博士号を持っている人たちを対象にしたデータサイエンティスト育成のための産学協同プロジェクト「CEO」の参画企業でもあるので、そういうものもどんどん利用していく予定です。

もっとも、人材養成には時間がかかります。実際に戦力になるまでには3~4年の実務経験も含め、都合10年はかかるでしょうから、中長期的に取り組まなければいけない課題です。変化のスピードを考えると、時間的余裕はありません。紙ベースでの管理データのデジタル化などには、いまから全速力で取り組んでいきます。