レバンドフスキに「デュエル」を挑む吉田と昌子

それでも、1対1の局面は必ずあり、そこで後手に回れば、苦しくなる。前任者のヴァイッド・ハリルホジッチが何度も強調していたデュエル(決闘)だ。4年前のブラジル大会で露見した課題だが、それを見事に克服している。

実際、吉田と昌子は時にファウルも辞さず、前線に残った敵の大砲をつぶしてきた。初戦ではラダメル・ファルカオ、セネガル戦ではムバイェ・ニアンに遠慮のないファイトを仕掛け、仕事らしい仕事をさせていない。

ポーランドの最前線にもロベルト・レバンドフスキという最も危険な相手がいるが、カード(警告)を恐れず、これまでどおりに容赦なくつぶせばいい。無論、長谷部と柴崎も同じだ。セネガル戦のボールの争奪でフィジカルの強い面々を向こうに回し、一歩も引かなかった。

とにかく予測が早く、危険地帯に先回りしてインターセプトを狙い、セカンドボールも次々と回収している。セネガルの攻撃が思うようにスピードに乗れなかったのも、長谷部と柴崎の働きが大きかった。2人のゾーンでやすやすと突破されていたら、吉田と昌子も対応が難しくなっていたはずだ。

日本はアクションを起こせ、道は開ける

良い攻撃が良い守備から生まれ、良い守備が良い攻撃から生まれる――。そんな好サイクルをつくりだす「魔方陣」が日本の攻守を力強く支えてきた。彼らのパフォーマンスにブレがなければ、アタック陣の持ち味も引き出されることになるはずだ。

ポーランドはすでに敗退が決まっているが、さすがに3連敗では祖国に帰れまい。開き直ってガンガン来る恐れがある。実際、グループBの3戦目でも、突破の芽がないモロッコが強豪スペインを破りかけたくらいだ(結果は2-2の引き分け)。

日本の勝ち抜きの条件は「引き分け以上」だが、守り切ろうなどと考えれば、付け込まれるだけだろう。何しろ、ポーランドには失うものがないのだ。立ち上がりからリスクを冒して、ラッシュをかけてくるのではないか。

いったん相手の勢いにのみ込まれたら、抜けだすのは難しい。だからこそ、これまで以上にアグレッシブな戦いが求められるはずだ。もっとも、選手たちにとっては望むところか。

こちらからアクションを起こせ――と、西野監督が一貫して説いてきたスタンスで挑めば、おのずと道は開ける。それをやり遂げるだけの自信も勇気も、いまの日本にはあるはずだ。

北條 聡(ほうじょう・さとし)
サッカーライター
1968年生まれ、早稲田大学卒業。1993年にベースボール・マガジン社に入社し、ワールドサッカーマガジン編集長、週刊サッカーマガジン編集長を歴任。現在はフリーランスとして、サッカーライター、サッカー解説者として活動中。近著に『サッカーは5で考える ――可変システムがわかれば試合が10倍面白くなる!』(プレジデント社)があるほか、『サッカー日本代表 勝つ準備』(共著、日本実業出版社)、『サカマガイズム』(ベースボール・マガジン社)、『正しいバルサの目指し方(サカマガトークJAM)』(共著・ベースボール・マガジン社)など著書多数。
(写真=AFP/時事通信フォト)
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