「中盤でイニシアチブを取りたい」と考えた西野監督

ところが、ハーフタイムを待たずにFKから同点に追いつかれてしまう。過去の日本代表は、W杯で先制しながら追いつかれた試合で一度も勝っていない。それどころか、ことごとく逆転されている。

『サッカーは5で考える』(北條 聡著・プレジデント社刊)

前回ブラジル大会のコートジボワール戦や2006年ドイツ大会のオーストラリア戦がそうだった。もっとも、今回は数的優位の「利点」が残っている。それを、どう生かし切るか。日本の命運は、そこにかかっていたと言ってもいい。

第一のポイントは、西野朗監督の「人選」にあった。もっと言えば、香川、乾貴士、柴崎岳の3人をそろって先発リストに加えたことだ。直近のパラグアイ戦における出来を考えれば、スタメンに抜擢されても不思議はない。ただ、この日の相手はコロンビアなのだ。

ディフェンスに回る時間が長くなる――そう考えるのが自然だろう。それを踏まえれば、よりディフェンシブな人選になっても、おかしくない。だが、西野監督の考えは違った。

「ディフェンシブに試合を進めるならば、別のキャスティングだったが、リアクションにならず、中盤である程度イニシアチブを取りたいと考えた。それには自分でもグループでもボールを扱える選手が必要だった」

グループディフェンスの改善が柴崎の潜在能力を引き出した

その必要な選手として名前を挙げたのが香川であり、乾であり、柴崎だった。彼らの起用に「決して守り一辺倒で戦うつもりはないよ」という、強気のメッセージを込めていた。

自分たちからアクションを起こしたい――とは、西野監督が繰り返し説いていた言葉でもある。パラグアイ戦で素晴らしいパフォーマンスを演じた柴崎の起用にメドが立ったことも大きい。球際で激しくファイトし、インターセプトを連発するなどで、不安視されていた守備力が大きく改善されていた。

いや、むしろグループディフェンスの改善が柴崎の潜在能力を引き出した――と見るべきかもしれない。前線からの連動したプレスが柴崎を含む「後ろの選手たち」の仕事をやりやすくしていたからだ。

個々の守備力に大きく依存してきたハリルジャパンのやり方(マンツーマンに近い守備)とは違っている。極めて短期の突貫工事ながら、香川、乾、柴崎をまとめてピッチに送り出せるだけの「環境」が整っていた。

果たして、西野監督の決断は吉と出た。

数的優位となったことで、リアクションではなく、イニシアチブを握るチャンスが大きくふくらんだからだ。もっとも、前半はやや慎重なゲーム運びに終始している。