「知らない土地で、いい飲み屋をどう見つけるか」は、酒好きにとっては大事な問題だ。ネット上では「『〈地名〉+酒場放浪記』で検索すると、いい店がヒットする」という説がまことしやかにささやかれている。

「その検索法はオススメできますね。『〈地名〉+吉田類』でもヒットするんじゃないかな。僕が行く店の中にぼったくるところはまずないし、ヘンなお客さんは少ないし、もちろんおいしい。自分で店を探す時は、飲んべえならではの勘が働くことがあるかな」

「昔、新聞連載の取材のために岡山の、観光客はまず行かない居酒屋に行ったことがあるんだけど、後日『お店にその記事が貼ってあった』というのを、スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)の川上(つよし)くんから聞いたんです。『あれ、類さん、こんな店にも来てたんだ』って驚いたって。逆もありますからね。札幌の『4丁目会館』っていう、昭和のお店が並んだ建物があるんだけど、地元の人に薦められてその中の1軒に寄ったら、そこは川上くんの20年来の行きつけだった。同じような店に食指が動くようになっているんでしょうね」

「食べるものがなければ飲まない」

いま、酒への風当たりは徐々に強くなってきている。国内の酒類市場は縮小傾向にあり、居酒屋業界はほかの外食産業に比べて売上高の落ち込みが大きい。その一方で、アルコール度の高い「ストロング系」といわれる缶酎ハイも人気だ。酒を飲む人と飲まない人の二極化が進んでいるのだろうか。

この日のおつまみはオレンジピール

「僕はお酒だけという飲み方をしないんです。必ずおつまみやごはんを食べながら飲む。もし食べるものがなければ飲まないようにしています。人間として生きていて一番楽しいのは、人とコミュニケーションを取ることです。おいしい酒とおいしいつまみのある飲み会の場なら、テンションが上がって、より楽しいコミュニケーションが取れることは間違いない。これは絶対に言っておきたいですね」

吉田類(よしだ・るい)
イラストレーター、エッセイスト、俳人
1949年生まれ、高知県出身。『吉田類の酒場放浪記』(BS-TBS)などに出演。酒場や旅をテーマに執筆活動を続けている。
(構成=成松 哲、撮影=丸山剛史)
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