名前やどこに住んでいるかは知らない「よっ友」とは

ここで18年組と接してきた現場の声を紹介しよう。首都圏の大学でキャリア教育を担当しているキャリアコンサルタントのB氏は、例年に比べて、18年組は緊張しないでよどみなく話すことができ、授業後の質問や課題に関する文章を書かせたときも、書かないで空欄のままにする学生の数は減ったという。

写真はイメージです(写真=iStock.com/yuoak)

ところが、自分が話したことや書いたことを翌週にはすっかり忘れてしまう学生が多い。B氏は語る。

「面接の練習でこうしたほうがいいよとアドバイスすると『気がつきませんでした、本当にそうですよね。来週もう1回練習させてください』と素直に言うのですが、翌週に練習すると、『気がつきませんでした』と再び同じ反応をする。『先週も同じことを言ったよね』と言ってもなぜか覚えていない。なぜだろうといろいろと考えてわかったのは、ネットとLINEの影響を強く受け、短期に集中して要領よく処理するのはすごく上手だが、それが終わるとリセット(消去)してしまう。そのため課題を整理したり、深めたりすることはできない傾向があります」

極めて場当たり的で、面接練習を「自分の問題」として引き寄せて考えようとしないところがあるというのだ。

▼「『よっ友』は友だちですか」と質問してくる学生

また、先ほどの産労総合研究所による調査で、人間関係の幅や深さにおいて本人と周囲の認識に乖離があると述べたが、その理由をある程度理解できる事例もある。

大学生のキャリア教育を担当している前出のコンサルタントのB氏はこんなエピソードを教えてくれた。

ある学生がキャリア教育に関して説明していたときに「『よっ友』は友だちですか」と質問してきたという。「よっ友」とは、すれ違いざまに「よっ」と声をかけるだけの間柄のことだ。

「それだけの関係なら友人ではないかもしれない」とB氏が答えると、その場にいた他の学生がざわついたという。なかには「そんなこと言われたら僕には友だちがいません」と、驚く学生もいたそうだ。

B氏は言う。

「彼らにとっての『友人』には、SNS上の友だちとそれ以外の友人の2種類があります。前者は、例えばフェイスブックでつながる人です。後者は、学内でばったり会って立ち話をして別れた後、一緒にいた仲間に『彼は友だちなの』と聞かれて『そうだよ、名前は知らないけどね』と言うような関係の人物も含まれます。友人だと思っていても個人のことに立ち入ることはしないし、友人でもどんなアルバイトをしているのか話さないというのは珍しくありません」

この話に関連するが、多くの企業の新入社員研修を手がける人材教育会社の講師C氏も「SNSの影響」をこう指摘する。

「友人同士でも個人の領域に深く入り込まない。学生時代から友人の名前は知っていても、じつはどこに住んでいるのか知らない人もいます。スマホやSNSのつながりが主流なのでコミュニケーションの範囲が限られ、年齢が離れた人と話をするのもストレスになるようです」