テスラはレーザー光を使った「LiDAR」を採用していない
以上を踏まえて、テスラの課題を改めて整理してみましょう。ひとつは自動運転です。テスラは、他社が自動運転において重要視しているレーザー光を使った「LiDAR」を採用していません。果たしてその選択は安全性を徹底する上で本当に正しいのか。実際に自動運転で死亡事故が起きているなかで見直しは必要ないのか。完全自動運転の実現に向けて各社がしのぎを削るなかで、テスラが遅れを取ることにならないか。
もうひとつは競合他社がEVで猛追していることです。ドイツのBMW、フォルクスワーゲンなどが数兆円規模の投資を図ってEV化を急いでいますし、メルセデス・ベンツは、テスラに対抗するべく3大陸、6工場でEVとEV用のバッテリーを生産する「グローバル・バッテリー・ネットワーク」構想を発表しています。これがテスラにとって脅威でないわけがありません。
何しろ、彼ら従来型の大手自動車メーカーは、テスラが苦労している量産化の技術をこれまで何十年と蓄積させてきました。センスのとがった高級車カテゴリではテスラに後れを取っていたかもしれませんが、「モデル3」と同じ量産車のカテゴリで競ったとき、安心、信頼の点でユーザーの評価が従来型の大手自動車メーカーに傾く可能性は小さくないはずです。
経営危機に陥ったとき支援する会社はどこか
そして最後に指摘しなければならないのは、テスラはこれまでずっと経営破綻のリスクを抱えてきた会社であるということです。EV市場を牽引する存在でありながら、創業以来一度しか黒字を達成したことがなく、いまも「モデル3」が大ヒットしない限りは存続が難しいと言われています。万が一の事態が起こる可能性は高いと言わざるを得ません。
もし緊急事態が発生したとき、テスラを救済するのはどこなのか。過去には、グーグルのラリー・ペイジに身売りを相談し、価格まで決まっていたという話があります。そもそもグーグルはスペースXの株主です。すでに相当な額を投資しており、当然テスラ救済に動くと考えられます。
加えて言うなら、ラリー・ペイジはイーロンの使命感を共有する熱狂的なファンでもあります。いざとなったらグーグルがテスラを買収する。これが本命でしょう。次点としては、テスラの株式をすでに5%保有し、次世代自動車産業にも乗り込んできている中国ITの雄、テンセント。ダークホースは、これまでうわさだけは何度も上がっているアップルが買収し、一気に垂直統合を加速する、といったところでしょうか。