仲間に対して「かなわない」と感じることは素晴らしい
そこで「彼らにはかなわない」「彼らを越えることはできない」と割り切るというか、いい意味で切り替えるのは、自分としてはありだと思っています。マルセイユという大きなクラブに来て、サッカー選手として上の景色を見ることができたうえで「ああ、ワールドクラスの選手って、本当にすごいんだな」と実感できました。
それで悔しいという気持ちが起こらないのは、自分の持つサッカー選手としての能力の最高到達点に来たのかなという思いがあります。
日本人の若いサッカー選手のなかには「自分が世界でどの位置にいるかを知りたい」と話す人がいます。サッカー選手として、自分の位置を知ることはすごく幸せなことですし、だからこそ海外挑戦はとても意味のあることです。
もちろん応援している人たち、ファン、サポーター、家族、友人は、いまの僕に対して「諦めるな」「努力すればもっと上に行けるよ」と叱咤激励(しったげきれい)してくれると思いますが、自分なりにもがきながらサッカー選手としての最高到達点まで這い上がってきて、仲間に対して「かなわない」と感じることは単純に素晴らしいことであり、まさに選手冥利(みょうり)に尽きることだなと思っています。マルセイユというクラブが、僕の知らない世界、まだ見たこともない世界まで連れてきてくれたわけですから。
サッカー選手個人として、できることをやり尽くし、そのうえでフロリアンやディミトリといった世界最高峰レベルには「かなわない」と感じるからこそ、世界トップレベルまで来られた事実に自信が深まりました。だから、これは「諦め」という感覚とはまったく違います。
【習慣4】自分の価値観を押しつけない
マルセイユの右サイドでコンビを組むフランス代表のフロリアンは、事あるごとにフランスのメディアに対して僕を称賛するコメントを出してくれます。それは、相手を尊重する僕の意思が彼にしっかり伝わっている証拠だと感じて、本当に嬉しいです。きっとフロリアンも「ヒロキ、伝わってるぜ」という意味合いでコメントしてくれているんだと信じています。
柏レイソル時代にコンビを組んでいたレアンドロ(・ドミンゲス)は、僕がハノーファーに移籍したあとのインタビューで、「私と酒井は良いコンビだった」と言ってくれていたようですが、それを聞いたときは本当に嬉しかったです。