世の中には、勝負事に勝ったとしても、その体制を長く維持できる者と、できない者がいる。

始皇帝の秦、項羽の楚、劉邦の漢という3つの覇権勢力を比べてみると、勝利を長く維持できたといえるのは、前後合わせて400年近い王朝を樹立した劉邦の漢のみ。始皇帝も項羽も、この点では惨めな失敗者だったのだ。

では、何がこの差を生んだのだろう。

鍵となるのは、「人心を得られたか否か」という点だ。この切り口は、現代企業の抱える組織の問題点と根本が変わらないので、それを例に引きつつご説明していこう。

まずは、始皇帝の秦。秦が紀元前221年に中国を統一したとき、大きな原動力となったのが、現代でいえば「成果主義」だった。軍功をあげれば出世できるが、逆なら降格という徹底的な「成果」の管理によって、強い軍隊を育み、他国を制圧していったのだ。

だが、秦はこのシステムを、天下統一後も採用し続けてしまった。

ようやくめぐってきた平和な時代のはずなのに、秦の体制は戦時と変わらぬ過酷さのまま。ささいな過ちでも罰せられる厳罰主義が敷かれ、人々は不満をため込んでいく。

現代でたとえれば、これは90年代に日本で「成果主義」がブームとなった状況に近い。当時、アメリカの最先端の人事評価だとして、多くの企業が導入に踏み切ったのだが、結果は芳しいものではなかった。

筆者も10年のサラリーマン経験があるのでわかるが、人は企業において、あまりに過酷な目標達成の鞭を当てられ続けると、ストレスで心身が持たなくなってしまうのではないだろうか。

現代の日本では、それでも社員が努力を続けて「うつ病」になったり、自殺したりするが、秦代末期は大規模な叛乱が勃発、結局、王朝の方がひっくり返ってしまった。