なぜ単純なセールストークに乗せられてしまうのか

【3:セール中のお店をなにげなくのぞいてしまう人】

家計相談で「貯金ができない」と訴える人は、ぜいたくはしていないと言いつつ、よくよく聞いていくと、「安く買う」ことに執着する共通点があります。「セール」という言葉に弱く、「今買わなくては!」と焦燥感を覚える、と彼らは言います。

写真=iStock.com/Imre Cikajlo

例えば、あるお店に入って、5万8000円のバックがあったとしましょう。通常、買うモノを選ぶ時、自分の好みに合うか、品質は確かなものか、といったポイントをチェックし、他の商品とも比較検討して最終的に購入するか決めるはずです。

しかし、通常価格8万3000円のところ、2万5000円割引の特別価格5万8000円と表示されていると「2万5000円も安くなっている」というインパクトに影響され、「自分はラッキーだな」と思う人は少なくありません。

行動経済学に、「アンカリング効果」という概念があります。最初にみた印象的な数値や情報が、その後の意思決定や購買基準に影響を及ぼす、という心理効果を指すものです

だから、「通常価格8万3000円のところ、2万5000円割引の特別価格5万8000円、でも今日ご購入のお客様は、さらに1万円割引の4万8000円になります」といったセールストークを展開されると、もう財布のひもはユルユルです。予算オーバーでも買わなくては損をしてしまう気持ちになるかもしれません。

▼お金の習慣を変える第一歩「レシートの扱い方」

こうした浪費習慣を改めるには、どうしたらいいでしょうか。

家計相談の際には、毎日「その日1日の支出額を振り返ってください」とお伝えしています。レシートや領収書、カード支払いの控えなどをすべて財布から取り出して見て、1日で合計いくら使ったのか、そのお金は使ってよかったのか悪かったのか。反省会を開くのです。

慣れてきたら、レシートや領収書に、○△×をつけてみましょう。

たとえば、タクシー代です。「公共交通機関だと疲れて仕事に支障がでてしまう」という理由での乗車は「○」。でも、「雨が降ってきたから」という理由は「△」。「準備作業に手間取り、待ち合わせ時間に間に合わない」という理由は「×」といった具合に。自分なりのルールを決めて、「△」「×」の乗車を少なくしていくのです。