ディスカッションも、「枠」を提示し、議論を活発化する
例えば、「ある本が売れた理由」についてチームでミーティングすることになったとしましょう。
このとき、「カバーの色が良かったんじゃない?」とか「著者が宣伝に積極的だったのが良かったよね」などと、各自がフリーにアイデアを出すよりも、「テーマ」「タイトル」「本文デザイン」「タイミング」……などと、「検討する要素」を決めてから意見を募るほうが、より多くの意見が出てくるはずです。考える対象が明確であれば、人は、自動的に考えようとするからです。
枠がない場合は、話がゼロからスタートするので、あらゆる方向に広がってしまいがちです。そして、ある1点だけに偏って考えたり、逆に、まったく手つかずの部分が出てきたりします。
場合によっては、自由な多角的なモノの見方が必要なこともありますが、時間のない中で成果を出さなくてはいけない場合には、範囲を決めて考える方法のほうが適しているのです。
実例:「20分のプレゼンテーションの内容」を決める場合
次に、実際に私が、どのように2軸の枠を「アイデア出し」で使っているのか、具体的に見てみましょう。
会社の新卒採用イベントで、就職活動中の大学生に対してスピーチをすることになった。これは、いくつもの企業が参加しているオープンな新卒採用イベントである。社員代表として行う「20分のプレゼンテーション」の内容を決める。
私がプレゼンテーションをするときに使っているのが、「伝えたいこと・聞きたいこと」を書き出した「枠」です。
この枠は、プレゼンテーションだけでなく、上司や会議での報告など、誰かに話をしなくてはいけない場面でも使えますので、ぜひ使ってみてください。
何かを伝えるという行為は、聞き手があってこそ成立するものです。
にもかかわらず、自分が話したいことばかりを詰め込み、聞き手が聞きたかったのは実は違う話だった……という残念なプレゼンを、私自身、よく見てきました。
それを避けるために、話し手として「伝えたいこと」を考えるのと同時に、聞き手の立場を想像して「聞きたいこと」も考えます。そうすることで、できるだけ聞き手が望むプレゼンに近づけることができるのです。