悪意による研究不正は、教育では防げない

STAP細胞事件について、「これは過去のことであって、今後はこのような事態は起きないだろう」と思っている人が多いかもしれません。

しかし、私は将来同様の事件がまた起きる可能性は高いと思っています。

冒頭に述べた通り、STAP細胞論文捏造が話題になって以降、研究者の管理は厳しくなっています。しかし、それらは管理者がするべきことをしていると主張するために行われている面が強くあります。

つまり、不祥事が起きたときの管理責任を問われないようにすることが目的となっており、再発防止につながるような活動はあまり行われていないのです。Eラーニングなどを用いた研究倫理教育の効果は、ルールを知らない人による違反がおきないようにすることだけで、もともと悪意があって研究不正をしようとしている人には何の効力も発揮しません。

悪意による研究不正が起きやすい土壌自体は、STAP細胞事件以降も、変わらず存在し続けています。

具体的には次の4つの問題が存在します。

1つ目は、トップ研究者の待遇を良くしようという動きです。

もともと独立行政法人だった研究所の中から、特定国立研究開発法人という法人格が新たにつくられ、「スター研究者」には破格の報酬を払えることがウリにされています(理化学研究所も今はこの法人に移行していますが、STAP細胞事件のためにそれが遅れました)。

私は、こうした動きは、研究不正を助長すると考えています。

大学や公的研究機関は、もともと待遇は大企業に行くより悪いけれど、自分のやりたい研究ができるという自由を求めて集まる場所です。そういう人たちは知的好奇心で仕事をしますから、結果を捏造して成果にしようという気持ちはもとからありません。

ところが、給与などの待遇が目的の人は、真実は何かといったことにはもとから関心がないのですから、不正に対する心理的ハードルは低いわけです。小保方氏も30歳で約1000万円の年収があったといいますから、かなりの厚遇です。