アベノミクスの副作用が出てくる可能性

【塩田】一方で「異次元の金融政策」をいつどういう手順で終わらせるかという「出口政策」も議論になっています。

【大塚】日銀は大量の国債を購入し、現在400兆円の国債を保有しています。国が全部を償還することは困難です。金融政策の運営上、日銀は保有国債の全部を売却する必要はありません。保有国債の一部は、元本償還の必要のない「永久債」に転換し、元本の返済義務を減らすことが一案です。

以前から多くのことを提案してきましたが、「それは現実的ではない」とか「そんなことは起こり得ない」と言っていたことが全部、現実になっているわけです。永久債も考えざるを得ない局面がくると思います。永久債と言わなくても、永久債と同じ効果を生み出すような手法を工夫せざるを得なくなるでしょう。

【塩田】安倍内閣は来年10月に消費税率を10%に引き上げることにしていて、実施するかどうかの判断を今年の後半に行うと見られています。この問題はどうお考えですか。

【大塚】経済状況がよければ、予定どおりやる必然性はあります。増税に反対ではありません。ですが、アベノミクスの副作用が極端に出始めたら、多分、増税はできなくなります。

来年10月に向けて、アベノミクスの副作用は拡大する可能性があります。安倍さんは今年9月の総裁選と2020年の東京オリンピックをにらんで、とにかく経済重視の政権運営をするでしょう。つまり、景気対策で今よりもたくさん点滴を大量に打ち続けるという形を取るでしょう。消費税は予定どおり引き上げられるかもしれないけど、オリンピック後の経済はかなり懸念が高まっています。

【塩田】日銀マンから、なぜ政治家の道を。

【大塚】いろんな巡り合わせで、2001年の参院選の際、民主党から立候補の誘いを受けました。当時、速水優総裁に仕えていました。私自身、1980年代のバブルの発生から崩壊まで、ずっと金融の最前線で仕事をしていましたので、金融政策の功罪や財政問題が深刻化していることに問題意識がありました。新聞に擁立記事が出てしまい、速水総裁に呼び出された時には怒られると思いましたが、意外にも総裁は「誘われているんだったらやりなさい。これから政府と中央銀行の関係は大変なことになってくる。中央銀行出身の政治家は必要だ」とおっしゃいました。今まさしくそうなっています。自分の問題意識や速水総裁の慧眼に導かれて政治の世界に入り、この局面で、巡り合わせで民進党代表になりました。後世のために、財政金融問題に一定の道筋を付けるのが私の仕事だと思っています。そのためにしっかりやりたい。

大塚耕平(おおつか・こうへい)
参議院議員・民進党代表
1959年、愛知県名古屋市生まれ。愛知県立旭丘高校、早稲田大学政治経済学部卒。83年に日本銀行に入行。金融政策の企画・運営に携わり、政策委員会室調査役を最後に退職。在職中に早大大学院博士課程を修了し、博士号を取得。専門はマクロ経済学。2000年に日銀を退職し、01年の参院選に民主党公認で愛知選挙区から出馬し当選(現在3期)。鳩山由紀夫内閣で内閣府副大臣、菅直人内閣で厚生労働副大臣等を歴任。現在、早稲田大学総合研究機構客員教授と藤田保健衛生大学医学部客員教授を兼務。著書に「公共政策としてのマクロ経済政策」「3・11大震災と厚労省」「『賢い愚か者』の未来」など。仏教研究家として中日文化センター仏教講座の講師等を務める。仏教関係の著書に「仏教通史」「四国遍路と般若心経」など。
(撮影=尾崎三朗)
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