憲法改正は最後に国民投票で国民が決める

【塩田】森友文書改ざん問題がクローズアップされ、安倍内閣の支持率が急落して、安倍政権の今後も「一寸先は闇」の状態となっています。安倍首相は自民党総裁3選、宿願の憲法改正実現というプランを構想していたと思いますが、視界不良となりました。ですが、安倍政権の下で高まった改憲の議論が、これからの野党結集・再編の問題とどう関係するのかという点が気になります。

【大塚】安倍さんは「憲法の理想の姿を掲げる」と言っていますが、代表質問で「理想の姿とは何か」と聞いても、安倍さん自身、深く答えられない。安倍さんの改憲論は、聞いていて、深みが感じられない。だからこそ、安倍さんとしっかり向き合って議論をしていくことが、結果として野党が結束するモメンタムを生み出す。同時に、安倍さんの改憲の動きに対する姿勢を通して、野党としての結束感、野党に対する国民の信頼感を高めるチャンスも存在していると思います。

憲法改正は最後に国民投票で国民が決めることです。結論が自分の考えと一致しなければ改悪と言ったり、一致しない可能性があるなら憲法の議論や改憲の手続きを阻止するといった主張は、国民に対して不遜だと思います。各政党には当然それぞれ主張があっていい。野党が自分たちの主張に賛同してもらえる人を増やせるように懸命に活動するのは当然のことですが、最後は国民が決めるということを忘れてはならないと思います。

大事なのは、むしろ手続論です。国民投票法では「それぞれのテーマごとに」と書いてありますが、代表質問で「逐条で投票するのか」と安倍さんに聞いたが、はっきり答えない。環境権と教育権と第9条を取り上げるとしたら、国民はそれぞれのテーマにそれなりの答えを出すと思います。ところが、これをパッケージにして投票するとなると、対応に窮します。ある意味、主権者の権能をないがしろにする対応です。もし安倍さんが国民投票をパッケージでやるのであれば、これは大問題だと思っています。手続論への対応は、改憲論争において野党が結集する非常に大きなきっかけになり得ます。

憲法についての考え方が自分たちの意見と一致しなければ改悪であると決めつけたり、考え方が完全に一致しない限りは他の野党とは協力しないという対応は、自己満足の政治以外の何物でもない。この部分を野党が正しく理解し、その論理を共有し、手続論で足並みを揃えられれば、改憲論争は野党結束の契機となり、野党に対する国民の信頼も高まると思います。

【塩田】大塚代表は日本銀行出身ですが、黒田東彦総裁は1期5年の任期が満了した今年4月、再任となり、2期目も続投となりました。黒田さんは1期目、安倍首相と二人三脚でアベノミクスの柱である「異次元の金融緩和」を推進してきましたが、ここまでの5年間のアベノミクスの仕上がり具合と、金融緩和の果たしてきた役割をどう見ていますか。

【大塚】経済政策には必ずプラス面とマイナス面があります。株価が上がったことと過度の円高が是正されたことの2点は評価しますが、一方で、実質賃金が上がらず、労働分配率は下がった。生産性の向上に実質賃金の上昇がまったく追いついていない。こうした点は、明らかにアベノミクスの失敗です。

国民生活の向上を目指すことが原点というわれわれの立場からすれば、相対的貧困率の中央値が下がり続け、貧困層が増えている現状は、憂慮すべき事態です。プラスとマイナスを合算すると、ネットではマイナス超であり、安倍政権はマイナス超の経済政策を5年間もやってしまった。その中核である黒田日銀総裁の「異次元の金融緩和」も当然失敗です。

黒田さんは「2年でマネタリーベースを2倍にして物価上昇率を2%にしたら、経済の好循環が生まれ、デフレから脱却する」と豪語していましたが、5年経って、マネタリーベースは4倍にしたのに、直近2年間は、消費者物価指数(CPI)は下がり続け、予想物価上昇率(BI)は低下傾向にあります。「黒田さん、あなたはいったい何をやってきたのですか」と問わざるをえない状況です。黒田総裁による異常な金融緩和を前提として組み立てられたアベノミクスは、過去に前例のない重大な宿題、過大な負債を後世に残しつつあります。