オランダは「自分の意見を述べる」を重視する

【秋山】でも、どうしてオランダを選択したんでしょうか? 先ほどの留年や進級の話以外に、オランダの教育と日本の教育での違いはどこにあると感じていますか?

【吉田】海外移住については、ビザ(査証)や生活費の問題もあったのですが、それらはいったん横においておきますね(笑)。教育に限って話を進めると、根本的なところで、日本の学校教育は「正しい答えを教える」ことに関してはすごく優れているけれど、「自分の意見を述べる」とか「どういうふうに考えるか」とか「なぜそうなっているのか」ということを教える教育にはなってないな、ということ。一方で、オランダは「自分の意見を述べる」「自分で考える」というところに重きを置いていると感じます。

学校全体で「こうしなさい」というものがほとんどないのは、その良い例です。実際、長男が通う学校の先生にハッキリとこう言われました。「先生は勉強を教える人ではありません」と。では、先生とは何か。「あくまで子供が好きなこと、やりたいと思えることを見つけるお手伝いをする人」だそうです。これはイエナプランに限らず、オランダで見学させてもらったモンテッソーリやダルトンなどの学校でも方向性としては同じだと感じました。

僕は今後、そういう「自分の意見を述べる」といったことが必要な社会になると思っています。だから、全員が黒板を向いて、お行儀よく先生の話を聞くというのが基本になっている日本の教育ではなく、オランダを選んだということです。

【秋山】なるほど。実際、私たちがオランダで学校を訪問したときも、子供たちは伸び伸びと自由に学習していましたね。そして、なによりも楽しそうな姿が印象的でした。

たとえば小学校低学年の子供たちは、「今日、自分はどういった勉強をしたいのか」を自分で選んでいました。つまり、小さな男の子や女の子が、自分自身でカリキュラムを決めていたのですが、当然、彼らは「楽しさ」を重視しますよね。

それから勉強する場所についても、楽しむことを重視している様子が窺えました。たとえば椅子ではなく、バランスボールに座って授業を受けていたり、課題に取り組むときは自分が集中しやすい場所に主体的に移動したり。廊下に机と椅子を並べて課題に取り組む子どもたちも普通にいましたよね。日本だと廊下は立たされる場所でしたが(笑)、オランダでは集中できる場所の一つになっていたんですね。これにもすごく驚かされました。

【吉田】そこ、本当にその「楽しい」ってところは、大きなポイントなんだと思います。オランダの学校で子供たちを見ていると、本当に楽しそうなんです。