日本のビジネスエリートたちに危機感を覚え、移住を決断

【秋山】『18時に帰る』という本の取材の中で、私たちは、オランダの社会にはそうした臨機応変さが至る所にあると感じました。変革期を迎えている今の日本社会にとって、それは大きなヒントになると思っています。吉田さんも、今の日本に危機感を持っているから海外移住を決めたとお聞きしました。

秋山開・公益財団法人1more Baby応援団専務理事。

【吉田】はい。もっと具体的に言うと、子供の将来のことを考えると、日本よりも良い教育環境、子育て環境が海外にあるんじゃないかなって思ったんです。

少しずつ変わってきたとはいえ、まだまだ今の日本は良い大学を出て、大手に就職すれば安泰という考え方があります。そして、日本の教育はその前提のもとにある。その結果、僕も含めてですが、組織としての日本の企業の弱さが露呈してきているように感じたんです。前職時代、一流と呼ばれる企業の方々と仕事をしてきたからこそ、余計にこれは危機的だなって。

一例をあげると、決裁のシステムが複雑すぎて、優秀であるはずの社員1人ひとりが思考停止状態になっていると感じています。決裁のために10以上の段階があって、その中で最初に掲げていたはずの方向性を捻じ曲げたり、持っていたはずの信念や意見を見失ったり、「持ち帰って検討します」と言ったまま何もしなかったり……。経済のグローバル化が進む中、このままでは日本企業は危ういんじゃないかって思ったんです。

【秋山】なるほど。実は、私たち団体では、毎年「夫婦の出産意識調査」というものを行っています。同調査では、「子育てと移住について情報収集をしたことがあるか?」という問いに、18.4%がYESと答えているのですが、興味深いのがそのYESと答えた人のうち、52%もの人が「実際に移住した」と答えていることです。

もちろん国をまたがない近距離の移住もあるのでしょうけど、それでも意外なほど多いという印象を持ちました。吉田さんのような危機意識を持っている人は、案外多いのかもしれません。

【吉田】そうですね。今の40~50代の親世代は、あと10~20年働けば無事に定年を迎えられるかもしれない。でも、子供たちはそうじゃないですから、子供のためを思ったら行動しないとダメだということでしょう。

僕自身、自分に2人の子供ができ、彼らが成長する過程で、「世界で活躍できる教育を受けさせるには?」ということを考えたのは当然だと思っています。そして、実際にいくつかの国を視察したうえで、オランダ移住を決断したんです。