3.11の影響「多摩川の壁」で栄光学園、浅野は躍進

今年のランキングをみると、震災の影響は神奈川県の学校にも及んでいることがわかる。神奈川県の鎌倉市にある栄光学園(62人→77人)や、横浜市神奈川区にある浅野(32人→42人)の躍進には、「多摩川の壁」が影響していると思われる。

震災後、私は「遠くの学校には通わせたくない」という意識を持つ親が増えたことに気づいた。自宅から遠い場合、帰宅困難者になるのではないか、歩いて迎えに行ける場所が望ましい――これは中学受験を控えた小学生の親であれば当然の心理だろう。

震災前は、2月1日に開成を受ける都内在住の生徒は、2月2日に神奈川県の聖光学院(横浜市中区)を受験するパターンがよく見られた。しかし、震災後は、2月2日に渋谷教育学園渋谷(東京都渋谷区)や本郷(東京都豊島区)、攻玉社(東京都品川区)を選ぶ家庭が増えたのだ。

この傾向は神奈川県でも同じだ。受験日が2月2日の聖光学院や栄光学園、2月3日の浅野を本命にする神奈川県の優秀な生徒は、これまで2月1日に多摩川を越えて、都内の開成や麻布、駒場東邦を受験する生徒も少なくなかった。

▼多摩川を越えた東京の私立へ行かせたくない

ところが、2012年は「多摩川を越えさせたくない」という意識で進学先を選ぶ神奈川県在住の家庭が増えたのである。たとえば、開成と、聖光学院や栄光学園、浅野の「神奈川男子御三家」の両方に合格しても、聖光学院や栄光学園を選ぶ親が目立った。例年、神奈川から東京の進学校へ優秀な子が“流出”するが、2012年はその数が少なかったのだろう。

神奈川男子御三家を比較してみると、2012年の栄光学園と浅野は前後の年と比べて受験者数が突出して多いことがわかる。震災の影響で、県内の優秀な子を獲得しやすかったことも、今年の東大合格実績で神奈川の学校が躍進した理由と考えられる。

直近の東大合格者数ランキングで学校選びを進めると、実態を誤解する恐れがある。中高一貫校は6年前の中学受験の状況も踏まえて判断する必要があるのだ。

また震災以降、寮を持つ学校を選択肢にする親も増えた。その代表例がラ・サール学園(鹿児島)の受験者数の増加だ。