若者は、まだ過去が積み重なりきっていませんし、立場も固まっていません。バイタリティもあります。ゆえに、中年に比べれば人生を変える余地はずっとあります。私たち中年はそのことを痛感しているので、まだ未来の選択の自由がある若者を見ると、「若いうちに○○をやっておきなさい」と言いたくなってしまうわけです。若者の可能性の豊かさにあてられたとき、つい、アドバイスの体裁を取りつつ、結果の蓄積によって身動きがとれなくなった中年の境遇をぼやきたくなってしまうのだと私は見ています。

写真=iStock.com/BackyardProduction

しかし、そういったアドバイスの体裁をとったぼやきのなかには、その中年自身が若いうちに身につけ損ねて苦労したことや、逆に、その中年が若いうちに身につけておいて役に立ったことといった、多種多様な人生経験が溶け込んでいます。そういった経験談から、自分にとって役立つエッセンスを読み取れるなら、きっとあなた自身の未来予想に役に立つでしょう。

若い頃から堅実に生きてきて、公務員として勤務している40歳女性・子持ちが語る「若いうちに○○をやっておきなさい」と、大学時代はほとんど授業に出ずに遊びまわり、現在は自営業として生きている40歳男性・独身が語る「若いうちに○○をやっておきなさい」では、言葉は同じでも意味するところはかなり違っています。あなたの性別や境遇、職業はどちらに近いでしょうか?

どの年上のぼやきが一番役に立ちそうなのか、どんな上司や先輩のぼやきが自分の未来を考える参考になり得るのか──そういったことの見極めが重要になるわけです。

「こんな風に年を取りたい」と思える人は大事なロールモデル

もし、あなたの身の回りに「この人の昔話は、なんだか役に立つような気がする」「自分の経歴や性格からいって、将来の自分はこんな風になれたらいいのにな」と思える上司や先輩を発見したら、しめたものです。そういう人は、あなたが若いうちに経験しておいたほうが良いことを知っているか、経験済みである可能性が高いと思われます。その人の昔話や、「若いうちに○○しておいたほうが良い」は、あなたの近未来を探る手掛かりになるかもしれません。少なくとも、そう読み取れる余地はあります。

私生活の面で、自分の将来がダブって見える年上を見かけたら、よくよく眺めておきましょう。食生活、友人関係、夫婦関係に対して、彼/彼女がどんなふうに気を遣っているのか、何を気に入っていて何を避けているのか、注意深く観察して参考にします。まねできるところはまねすればいいですし、彼らが直面している困難に対して事前に手が打てそうなら手を打ってしまいましょう。あなたのほうが若いぶん、事前に対策を立てるための時間はあるはずです。