中1になった今は「津波体験キット」作りに夢中
そのかいあって、賢一朗君の学校の成績はぐんぐん伸びて、クラスで勉強のことを頼られるような存在となったのだ。しかし、そんなにスパルタな父を賢一朗君はどう感じていたのだろうか。
「はじめのうちはつらかったです。でも、言われた通りコツコツやっていると勉強ができるようになってきて……。ああ、こういうことも大切なんだなと思うようになりました。いまは、やってよかったなと思っています」
「つらくあたった」と話す裕一朗さんだが、生活のすべてを勉強でがんじがらめにしたわけではない。賢一朗君はむしろ多趣味といっていいだろう。運動だけでもサッカー、テニス、卓球、水泳、剣道。幼稚園から続けるピアノでは4年生で全校の伴奏をやるようになり、浜松市音楽科研究発表会の伴奏にも選ばれた。作曲もこなす。また、読書感想文コンクールも入賞常連となった。
「習い事で学んだのは頑張らなくちゃいけないときは頑張るということ。コツコツやってきた結果が出たのが4年生頃かな」(賢一朗君)
中学生になった賢一朗君。ある日突然、「津波の力ってどれくらいかなあ」と言いだした。東日本大震災の映像を見て津波の恐ろしさを知ったからだ。
水圧などについて習った賢一朗君は、足に巻くおもりとエキスパンダーを組み合わせ、津波の引き潮を体感できるキットをつくり、夏休みの自由研究として提出した(浜松市小中学生理科自由研究展銅賞。特許申請中)。中学3年間をかけて津波に取り組んでみたいという。
「常に頭のなかに、これってできないかな、というアイデアがいくつかあるんです。津波もそうですし。たとえば、ベクトルをうまく説明できないかとか、あとワープって本当にできないかな、とか……。そんなことを考えたり、工夫したりするのが好きなんですね」(賢一朗君)