「日航ジャンボ機事故」との共通点

話は変わるが、30年以上前の1985年8月12日、日本航空のジャンボ機(B747)が群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落した。

機体は大破し、乗客乗員520人の命が奪われた。世界の航空史上、最悪の惨事となったが、今回の新幹線の台車枠の亀裂問題と共通点がある。

日航ジャンボ機事故の原因は、修理ミスだった。事故機は7年前の78年に大阪空港でしりもち事故を起こしていた。この事故で壊れた機体後部の圧力隔壁(アフト・プレッシャー・バルクヘッド)の修理に米ボーイング社の修理チームが当たった。しかし作業員がリベットの打ち方を正しく行わずに隔壁の強度が十分に保たれていなかった。その結果、飛行を繰り返す度に隔壁に金属疲労による亀裂が生じ、事故当日にはその亀裂が一気に裂けて客室から噴き出した空気で垂直尾翼やハイドロ(油圧駆動システム)などが次々と破損し、操縦不能に陥って大惨事となった。

なぜ指示通りに作業が行われなかったのか

修理を担当した米ボーイング社の修理チームは、損傷した圧力隔壁の下半分を交換した際、指示書通りの修理をしないで2枚に切った継ぎ板を使った。

ボ社は修理ミスを認めている。しかしなぜ強度が弱まるような修理を行ったのか。これについてボ社は一切、説明していない。

1987年に公表された運輸省(当時)事故調査委員会の報告書は、事故原因を「ボ社の不適切な修理ミスに起因する」としているものの、その修理ミスがなぜ、起きたかには触れていない。

今回の新幹線の台車枠は、前述したように設計を無視して現場の判断で勝手に削られた。現場がマニュアル通りに作業しなかった。ここが日航ジャンボ機墜落事故と共通している。

この共通点にも全国紙の社説は一行も触れていない。かつて10年以上にわたって社説を書いてきた1人の新聞記者としてとても残念だ。

日航ジャンボ機事故ではなぜ、作業員が修理ミスを犯したか。指示通りに修理しなかったかが不明のままである。日米間の法律の違いなど日本の運輸省や捜査当局の力の及ばないところに真の事故原因が隠れてしまったためである。

だが、新幹線の台車枠の削り過ぎの問題については、どうしてあそこまで現場が勝手に判断したかを徹底的に追及することはできる。現在、国の運輸安全委員会が新幹線初の重大インシデントとし、調査を進めている。その調査の先には、川崎重工業という大会社の組織的問題が見えてくるはずだ。

(写真=時事通信フォト)
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