問題の台車を装備したままの車両を運行している

続けて朝日社説はこう主張する。

「川重によると、作業指導票には『外枠を削ってはいけない』とあるという。その不徹底の責任は管理部門にもあろう」
「設計と製造の社員間で、意思疎通はできているか。重要部品を製造する認識と責任感はあったか。川重はメーカーとしての姿勢を根本から正すべきだ」

「姿勢を正すべきだ」という紋切り型の主張では甘過ぎる。川崎重工業には大勢の乗客の命を預かる新幹線車両の部品を製造する資格などもうないからだ。大事故を起こしてからでは遅い。

朝日社説は「製品が設計通りかチェックできる仕組みを、速やかに確立してほしい」とも主張するが、検査体制の見直しなど当然のことだ。

次に朝日社説は「不安が拭えないのは、厚さに不備のある川重製の台車はJR西、東海に計147台納入、一部運行を続けていることだ」と書き、「JR西は超音波を用いた検査で亀裂の兆候がないと確かめられたとしている。だが、のぞみ34号の場合、最初の亀裂がいつ、なぜ生じたのか未解明のままである」と指摘する。

その通りだ。それなのにJR西日本や東海は、問題の台車を装備したままの車両を運行している。ここで朝日社説はもっと追及すべきだ。

朝日社説は「東海道だけで1日に約300本が運行する新幹線は、正確な発着時刻や本数の多さといった利便性が売りものだ。ダイヤへの影響を避け、走行を優先させることは許されない」としたうえで、「両社は厚さに不備のあった台車の交換を進めている。それは当然だが、異変の兆候があれば躊躇なく止めるべきだ」と訴える。

だが異変の兆候をきちんと把握できればいいが、その兆候を見逃すと、大事故に直結する。運行しながらの台車の交換ではなく、問題の台車枠を付けた車両の運行をすべてとりやめて交換すべきである。

読売も毎日も運行継続の順次交換を許容する

3月4日付の読売新聞の社説も「鋼材の厚さ不足のまま納入された川重製の台車は、JR西とJR東海で計147台に上る。一部で交換が始まったものの、終了までには時間を要するという」と書き、「可能な限り迅速に交換を進めてもらいたい。未交換のままで営業運転する場合には、超音波検査などによる安全確認に万全を期さなければならない」と主張する。

この主張も朝日社説と同様に甘い。

毎日新聞の社説(3月2日付)も次のように主張している。

「JR西や東海は、問題が発覚した全ての台車を交換する方針だ。不正が分かった以上は一斉に交換すべきだが、そうすれば新幹線の運行に支障が生じる事態も考えられる」
「JR側は、超音波検査で鋼材に傷が見つからなかった台車については『すぐ亀裂は生じない』と判断し運行を継続しつつ順次交換を進めるという。その判断は理解できるが、安全を確保するために一日も早い交換を求めたい」

本当に亀裂はすぐには生じないのだろうか。危険は想定外のところから忍び寄る。これまで何度も車両事故を繰り返してきたJR側の説明は信じ難い。

たとえば時速300キロ近い猛スピードで走行することもある新幹線の台車枠には、かなりの力がかかる。それが亀裂の発生にどう影響するのか。JRは亀裂のメカニズムをどこまで把握できているのだろうか。