アミューズメント性から差別化戦略が生まれる

ディスカウントストア業態では規模も成長速度も2位以下を圧倒しているドン・キホーテですが、ここで同社を巡る競争環境を整理してみましょう。

圧縮陳列と深夜営業で独自の都市型ディスカウントモデルを強みに、都市部を中心に展開してきましたが、地方・郊外ではその強みは必ずしも活かせません。長崎屋の買収により食品および地方展開の基盤を手に入れたものの、地方には有力な同業他社が多数ひしめいています。

また、都市部においては、コンビニや100円ショップなどの小型業態や通信販売が利便性や安さを武器に競合し、さらに食品スーパーやドラッグストア、家電量販店などが専門性や安さを強みとして戦っています。

ドン・キホーテが同業他社と周辺業態との競争にさらされている状況において、さらなる成長を成し遂げるためには、やはり同社の強みを活かした差別化戦略が重要なポイントとなります。

アミューズメント性をコンセプトとした店舗レイアウトと商品戦略が強み

ドン・キホーテの強みとは、圧縮陳列された多種多様な商品ジャングルのなかを探索して回る楽しさを集客の重要なポイントとしている点です。すなわち店舗をアミューズメント施設と考えている点が他の小売業態と異なる部分であり、そうしたコンセプトに基づく店舗レイアウトや品揃えが同社の強みです。

業界内外の競争が激しい市場でさらに成長するためには、やはり差別化戦略が重要です。高いアミューズメント性こそがドンキの持ち味ですから、この特徴を活かした戦略で、都市部・地方、ECそれぞれでアミューズメント性の再現を図ることが同社の成長戦略の重要な鍵となっていくでしょう。

大前研一(おおまえ・けんいち)
ビジネス・ブレークスルー大学学長
1943年、北九州生まれ。早稲田大学理工学部卒。東京工業大学大学院で修士号、マサチューセッツ工科大学大学院で、博士号取得。日立製作所を経て、72年、マッキンゼー&カンパニー入社。同社本社ディレクター、日本支社長、アジア太平洋地区会長を歴任し、94年退社。近著に『ロシア・ショック』『サラリーマン「再起動」マニュアル』『大前流 心理経済学』などがある。
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