立地は悪く、主力メニューは2つ。でも行列ができる

さらに飯田さんは「よい豚はしゃぶしゃぶか、塩コショウで焼いて食べるのが一番おいしい」と考え、ハム・ソーセージなどの加工品だけでなく、千葉のこの不便な立地に直営レストランを開業します。

恋する豚研究所のレストランの様子(写真:左)、自慢の豚肉をつかったメニューは2種類だけ(写真:右)

主なメニューは1280円の豚のしゃぶしゃぶと、豚の塩コショウ焼きのセットだけ。しかも営業時間は11:00~14:30のランチタイムだけ。座席は46席と決して大きなお店ではありません。ところがいまや月間7000人以上が訪れる人気店になっています。週末には行列ができるので、店を訪ねるのであれば平日がおすすめです。

豚のおいしさはもちろん、野菜はすべて契約農家からの「朝採れ」の地野菜。さらに醤油どころの千葉ということで醸造メーカーとコラボした独自ブランドのポン酢は年間4万本が売れるヒット商品になっています。

平均を大きく上回る「賃金」を実現

障害者総合支援法では3つの区分で「就労系障害福祉サービス」を展開しています。このうち人数が最も多い「就労継続支援B型事業」で働く人は約19.3万人(平成27年2月現在)で、平均工賃は月額1.4万円(平成25年度)です。また次に人数が多い「A型事業」では約4.6万人が働いていて、平均賃金は6.9万円です。

店頭には年間4万本を売る独自ブランドのポン酢をはじめ、千葉県産のさまざまな食材が並べられている(写真:左)、契約農家から届く「朝採れ」の地野菜(写真:右)

これに対し、恋する豚研究所で働く障がい者の方には平均値で月額8万円、中央値で月額9万円の賃金が支払われています。

新たに農業、林業、地域エネルギーにも取り組む

そして今、さらに新たな事業を立ち上げようとしています。ひとつは農業です。千葉県はサツマイモの産地で、周囲には多数の畑があります。この畑を使って、サツマイモの栽培を請け負い、さらに収穫物をスイートポテトに加工して販売するのです。加工することで、そのままサツマイモとして販売するよりも、儲けは大きくなります。

周囲にある放置山林をつかった林業に挑む

もうひとつは林業です。恋する豚研究所の周囲に残る放置森林の管理を請け負い、自伐林業を計画しています。伐採した木材は、加工して販売するほか、福祉施設に新たに設置される薪ボイラーの燃料としても使う予定です。

これまでの養豚、食品加工、レストランという事業に、新たに農業、林業、地域エネルギーを組み合わせようとしているのです。