待合室まで患者を迎える私流
私自身は、診療に際して以下のようなことを心がけています。参考までに挙げてみます。
1.診察室や身なりは、不快にならない程度に清潔に
2.応対のちょっとした工夫
・初診の場合は待合室まででかけて患者さんに自己紹介し、診察室に招き入れる(ここで得られる情報は結構多い)。
・できるだけ同伴面接を心掛ける(お互いの誤解、特に家族間の誤解が生じにくい)。
・診察の初めに必ず「よくいらっしゃいました」と話しかける(来院した勇気に敬意を払う)。
3.面接中の工夫
・できるだけ頭部CT(MRI)をすすめる(脳病変など器質的原因は時間が勝負)。
・困っていることを中心にできるだけ自分の言葉で話してもらう。
・困ったときの対処法を訪ね、うまくいっていれば讃める(強化する)。少なくともその努力を認める。
4.診察(面接)の終わりに
・現時点で考えられる今後の予測も含めた診断名を告げる。
・お薬は1~2種類を適宜使う。副作用の説明後、必ずお薬にメッセージを載せる。「薬がうまくあえば少しずつ怖い感じが消えるかもしれないよ」「久しぶりにぐっすり安心して眠れるといいね~」。
・歳時記や気候を用いて再来日を印象付ける。たとえば3月3日が再来日であれば「ひな祭りの頃にまたお会いしましょう」と一言添える(手前味噌ですが、再来日の間違いやその結果の怠薬などのうっかりミスなどが減るように感じます。こうした対応は先ほど述べた治療のアドヒアランスを上げるひと工夫です)。
以上、35年の臨床経験から得た、わたしのやり方の一部です。これがスタンダードというわけではありませんが、信頼できる精神科医を選ぶうえでの参考になればと思います。
主治医を変えることができるのか
1度は通院を始めたものの、「説明が不十分で納得できない」、あるいは「態度が高飛車に感じられて不満」といった時には、どうしたらよいでしょうか。
以下の2つのケースに分けて、解説します。
開業の先生は、ほぼ1人で業務をこなしており、経営者も兼ねることが多いようです。そのためか、いわゆる一方的な父権主義(パターナリズム)になりがちです。自分の判断がつかないときに手際よく専門の医師を紹介してくれる先生、セカンドオピニオンを申し出てもいとわない先生は良医でしょう。
2)同じ科に複数の医師がいる大病院の場合
一般に、所属科には経験年数により3~5人の医師が在籍します(部長・副部長・指導医・レジデント《数年目》・研修医など)。良心的な科であれば、主に患者さんを担当する医師は、常に上級医師にアドバイスを受けています。そのようなスタッフ間の風通しの良しあしはなんとなく雰囲気で察知するしかないでしょう。医師間の関係が複雑な場合には、別の医師の診察はあきらめ、病院を変えるしかありません。