「これを言ってくれただけでもかなりいい感じのはず」「これを超えたらさらに面白くなるはず」。そんな想いで台本をつづっています。ある意味、出演者との真剣勝負です。

9割くらいは芸人さんのアドリブが台本を超えてきますが、ごくたまに自分の書いたセリフをしっかりと自分の言葉として発言してくれる時もあります。その時はまさにガッツポーズです。若手時代、とんねるずさんやビートたけしさんの番組をやっていた時に、ちょっとでも自分の書いた言葉がセリフに残っていると、それだけで一日中、幸せな気持ちになりました。

『ねるとん紅鯨団』(フジテレビ系/1987~94年)を担当していた20代の時、100回突破記念なのにもかかわらず、深夜番組ゆえセットが何も変わっていなかったので、それを逆手に「100回記念でセットもすっかり新しくなった!」という設定で、古いセットを褒めまくるというオープニングトークを先輩と一緒に考えて台本にしたことがあります。いつもならば、フリートークでオープニングが始まるのですが、それをとんねるずの2人がほぼそのままの内容でやってくださった時は本当に感無量でした。

ちなみに最近は、出演者の意向を事前にくみ取るために、台本の初稿ができたところで打ち合わせをして事前にどんなことを言うかを確認するケースも出てきました。よりスムーズにロケや収録が進むメリットはありますが、進行を担当する司会者以外はノー打ち合わせで、緊張感のある現場のままにしておいたほうがはじける可能性があるのに……と個人的には思ってはいます。ですが、昨今のコンプライアンス事情を考えると仕方のない部分ではあります。

スポーツ番組にも台本がある理由

台本はバラエティ番組においては出演者たちへの指針という意味合いだとお伝えしましたが、これが情報番組やスポーツ中継になると、放送作家のスタンスも台本の役割も大きく変わってきます。

情報番組の場合、間違った情報を流せないだけに、ひとつひとつのセリフに対して確認しながら書き進めなければいけません。話す順番をちょっと変えるだけで、事実と異なる展開になってしまう可能性があるからです。膨大な資料を読みあさったり、専門家に会ったり……と非常に手間暇をかけて書いていきます。