バラエティ番組と並んで私がよく担当するスポーツ番組の台本事情も、情報系と似た傾向にあります。『ジャンクSPORTS』(フジテレビ系)や『炎の体育会TV』(TBS)はほぼ通常のバラエティ番組と一緒なのでさほど疑問には思われませんが、担当番組の話になった時に「オリンピック中継や世界卓球中継、あと格闘技中継の放送作家などもやっています」というと、かなりの確率でけげんな顔をされます。中には「『金メダルを取る!』『チャンピオンが王座を防衛する!』みたいなことを台本にしているの?」と聞かれることも。
もちろん、結果を書くようなことは絶対にありません。スポーツ中継の場合、試合前のスタジオ部分などの台本を事前に書き、そのあとはテレビ局のスタッフルームやスタジオの隅に待機して、結果に即してリアルタイムで書き足していきます。ここでは気の利いたコメントなど二の次、試合の経過に合わせた正確なデータと今後への的確なフリが主に求められます。
スポーツ中継の裏側は修羅場
「世界卓球」ならば、「日本人選手のメダル獲得は何年ぶりなのか?」「次の対戦相手は誰になりそうか?」といった結果によって変わっていく、伝えるべき情報をその都度選んでいきます。ある程度のパターンの準備稿は用意していますが、経過次第で時間を割きたいトピックスが変わりますし、試合時間の長短で与えられる放送時間の尺も変わるので常にギリギリの作業になります。
なお、日本人選手が負ける想定の台本はゲン担ぎの意味も含めて用意しないように決めているので、万一、想定外の負けを喫してしまうと修羅場と化します。私が担当しているスポーツ中継で、有力な日本人選手が負けるシーンを観たら「いまごろ大変なんだろうなぁ」と同情してやってください。
こういう時は得てして、いろいろなハプニングが連発します。2分くらいあったトーク部分が本番ギリギリに30秒に短縮になるなんてことも。その状況の中でどこを短くして、どこを強調すべきか。省略したことでつじつまが合わないことが生じないか。迫りくる時間の中で判断していきます。