スケジュール変更の“抵抗勢力”は「あの組織」

実現のためには、日本陸連が全日本実業団駅伝の主催者を説得する必要があるだろう。元日の全日本実業団駅伝は日本実業団連合が主催で、毎日新聞社、TBSテレビ、群馬県が共催する形をとっている。

写真=iStock.com/peepo

メディアは自社のかかわっている駅伝やマラソンの注目度を、少しでも上げたい。毎日新聞社やTBSテレビは元日の全日本実業団駅伝を「ニューイヤー駅伝」と呼んで盛んに宣伝してきた。このため3月へスライドすることには難色を示すだろう。

だが、「ニューイヤー駅伝」という名称を続けることと、日本勢のマラソン強化では、どちらが重要だろうか。日本陸連がイニシアチブをとり、確固たるビジョンを掲げて、スケジュールを調整・管理すべきではないだろうか。

▼ニューイヤー駅伝の出場は「4回まで」にせよ

駅伝とマラソンの両立について、もうひとつ秘策がある。

それは、全日本実業団駅伝の出場回数に制限を設けることだ。たとえば、「出場は4回まで」という規定にすれば、個人のレースにも集中しやすくなる。大卒から4年連続出場した場合には26歳。マラソンに向けて本格参戦するにはちょうどいい。箱根駅伝のように出場できるチャンスが限られることで、選手は高いモチベーションを維持できる。視聴者にとっても熱いドラマを期待しやすくなる。

駅伝は日本特有の文化で、日本人の琴線に触れる美しさを持っている。駅伝という文化が長距離の裾野を広げたことは高く評価すべきだろう。また箱根駅伝の人気があるからこそ、高校駅伝や実業団駅伝も盛り上がる。

ただ、駅伝でどれだけ頑張っても、マラソンの強化にはつながりにくい。駅伝とマラソンが両立できるような「仕組み」を考えることが、日本長距離界の“明るい未来”につながる第一歩になるはずだ。

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