ニューイヤー駅伝の開催日「元日」がネック
陸上関係者が「駅伝がなければ」といったときの「駅伝」とは、元日の「ニューイヤー駅伝」(全日本実業団駅伝)を指す。一般的に「駅伝」といえば、大学生の「箱根駅伝」を想起する人が多いと思うが、これはそれほど”やっかい”な存在ではない。
箱根駅伝でヒーローになり、マラソンでも2時間7分台をマークした今井正人(トヨタ自動車九州)も筆者に対してこう話す。
「箱根駅伝は大学時代に4回しか走れません。明確な目標があるので、選手もそこに向かって自然とモチベーションが上がる。でもその後、実業団に入ると、どこに目標を置いていいかわからなくなる選手は少なくありません」
全日本実業団駅伝のほうが箱根駅伝よりレベルは高い。だがテレビ視聴率では全日本実業団駅伝は箱根駅伝の半分以下だ。陸上長距離で箱根駅伝以上に注目される“舞台”は、オリンピックや世界陸上といった世界大会しかなく、そこに挑める選手は限られている。目標設定が難しいため、「駅伝でチームに貢献できればOK」という甘い考えの選手も出てきてしまう。
▼主要マラソン大会の間に組まれた「駅伝」がやっかい
さらに全日本実業団駅伝が“やっかい”な存在であるのは「レース・スケジュール」だ。
男子の場合、12月上旬に福岡国際マラソン、2月下旬に東京マラソン、3月上旬にびわ湖毎日マラソンと、3つの代表選考レースが開催される。ところが、その間となる元日に全日本実業団駅伝が行われるのだ。全日本実業団駅伝で優勝経験のあるエースランナーは、駅伝とマラソンの両立について、以前筆者にこう語っていた。
「チームとしては駅伝の優勝が最大の目標になります。そのため、直前の福岡国際を走るのは難しい。かといって全日本実業団駅伝の後にマラソン練習をするとしても、東京やびわ湖だと時間が足りません」