肌の乾燥は「季節」や「加齢」のせいではない

「最近、手や顔、体の洗いすぎによって皮膚病にかかる人が増えている」とは、皮膚科医たちの指摘するところです。

私たちの皮膚は、新旧の細胞がたえず入れ替わっていることで、正常な状態を保っています。新しい細胞は皮膚の最奥で生まれ、古い細胞はどんどんと押し上げられ、最後は垢となって自然とはがれ落ちるようにできています。その垢になる一歩手前の細胞が角質です。

角質は細胞としては死んでいますが、決して無用のものではありません。角質細胞は密に手を組んで幾重もの層をつくり、ほこりやダニなどアレルギーを起こす原因物質(アレルゲン)や、病原体などが皮膚の深部へ入り込むのを防いでくれているのです。つまり、皮膚の丈夫さは、角質層がきちんと形成されていることも大事なポイントです。

その角質層は脂肪酸の皮脂膜で覆われていることで、正常な状態を保つことができます。角質層がバラバラにならないよう、皮脂膜が細胞どうしをつなぎとめているからです。

ところが、皮膚を洗いすぎると皮脂膜がはがれ落ちます。すると、角質層にすき間が生じ、皮膚を組織している細胞がバラバラになっていきます。こうなると、皮膚に潤いを与えている水分の多くが蒸発して、カサカサしてきます。この状態が乾燥肌です。

そんな状態の皮膚を、さらに石けんなどを使って洗えば、乾燥肌が進行して炎症を起こすようになります。こうなると、肌がかゆくてしかたがなくなります。この状態を「乾燥性皮膚炎」と呼びます。また、ほこりやダニなどのアレルゲンが皮膚内に入り込み、強いかゆみや肌荒れを起こす「アトピー性皮膚炎」の原因にもなります。

肌が乾燥する原因の大半は洗いすぎ

皮膚常在菌のつくる皮脂膜は、天然の保湿成分です。皮膚にとって、皮脂膜ほど肌によい・保湿剤・はありません。こんなに大事なことも知らず、多くの人は、常在菌の築いてくれる皮脂膜を手洗いで落とし、人工的につくられた高価な保湿剤を塗っているのです。

それというのも、「冬の時期は乾燥する」「年齢による乾燥肌」などと、コマーシャルでは肌の乾燥を、季節や加齢のせいにしているからでしょう。しかし、肌が乾燥する原因の大半は、洗いすぎです。では、メーカーはなぜその真実を伝えないのでしょうか。洗顔石けんなどの商品が売れなくなるからです。また、肌に潤いを与える保湿剤や美容液は、基礎化粧品のなかでもっとも高価な商品でもあります。

だからこそ、私たち消費者が賢くなる必要があります。「人も自然の生き物である」という原則に戻れば、自分の体がつくり出す皮脂膜ほど肌によいものはないとわかるはずです。

ちなみに、「弱酸性だから肌に優しい」というハンドソープやボディソープの宣伝文句もよく目にします。皮膚が弱酸性なのは、皮膚常在菌が皮脂膜をつくり出してくれているからです。洗浄力の強い石けんで洗えば、それがたとえ弱酸性であったとしても、結局は大事な常在菌や皮脂をはがしてしまいます。つまり、「弱酸性だから肌に優しい」というのも「なんだかよさそう」と消費者にイメージさせる文言であり、正しい情報とはいえないのです。