原油価格は4年前まで1バレル当たり100ドル近い高値だった。だが米国で「シェールオイル」が採掘されたことで、2016年2月には20ドル台まで下落した。その後、OPEC(石油輸出国機構)の減産により、現在は60ドル前後まで回復している。原油価格をめぐるOPECと米国の綱引きは、どのように推移するのか――。
▼2018年を読む3つのポイント
・原油価格の下支えに向け、OPECは減産姿勢を堅持
・米国シェールオイルの増産ペースは緩やかにとどまる見通し
・「OPECvs.シェールオイル生産企業」の構図は変わらずとも、原油価格は安定へ

OPECは必要に応じて減産強化へ

ここ数年の原油市場は、OPEC(石油輸出国機構)の減産と米国のシェールオイル生産の動向に大きく左右されきた。

原油価格は、2014年夏場以降、世界的な景気減速懸念の強まりや米国でのシェールオイル生産の拡大、OPECの生産調整に対する消極姿勢などを背景に急落した。その後、採算割れに陥ったシェールオイル生産の減少や、OPECによる減産姿勢への転換を受け、WTI原油先物価格は、16年2月につけた1バレル当たり20ドル台半ばを底に持ち直しに転じている。足許では米国のシェールオイル生産が再び増加しているが、OPECの減産への取り組みが下支えとなり、底堅く推移している。

今後の原油市場を展望するうえでも、引き続きOPECの減産と米国のシェールオイル生産の行方が焦点となる。

まず、OPECは今後も減産姿勢を堅持する可能性が高い。これが原油価格の押し上げ要因として働く。これまでのOPECの減産実績を振り返ると、ほぼ目標に沿った減産が行われている(図表1)。過去にOPECが生産枠を設けていた時期には、実際の生産量が生産枠を大きく上回ることが常態化していた。そのため、今回の減産合意の遵守状況は極めて良好な水準にあると評価できる。

産油国の多くは、原油価格が高水準で推移していた時期に、その輸出で得られた収入を基に手厚い社会保障・福祉を国民に提供してきた。しかし、原油価格の急落を背景に歳入が大きく目減りし、大幅な財政赤字に陥った。これらの国では、増税や歳出削減に努めているが、国民の不満を強めかねない大胆な改革は難しく、財政収支の改善に向けて何としてでも原油価格の低迷は回避したいという状況にある。とりわけ、これまで政治情勢が比較的安定し、中東最大の産油国としてOPECを主導してきたサウジアラビアの危機感は強い。実際、減産目標の半分近くをサウジアラビア1国で担っており、同国の減産に対する本気度が伝わってくる。

もっとも、政情不安により減産合意の対象外となっていたリビアやナイジェリアの増産などが、これまでのサウジアラビアを中心としたOPECによる減産の効果を一部打ち消してしまっている。このため、OPECが減産により目指している原油市場のリバランス、すなわち、高水準に積み上がった原油在庫の削減は依然として道半ばの状況にある。

当初2017年6月末とされていたOPECの減産期限が、2度の延長を経て18年末まで先延ばしされてきたのは、そうした状況が強く懸念されたためといえる。さらに、OPECが原油価格の本格的な安定には過剰在庫の一掃が不可欠とみていることを踏まえると、18年入り後、減産目標の引き上げなど、必要に応じて一段の減産強化に踏み切る可能性もある。