「あの手この手」小手先の操作で賃金を引き下げ

そもそもバブル世代への見方・判断は企業によっても大きく異なる。リストラの理由は中高年の高い給与あることは前述したが、ある大手機械メーカーでは数年前に年功的賃金ではなく、職務や役割に応じた賃金制度に変更した。それにより給与が下がる社員も発生するが、一方で50歳を過ぎても昇格・昇進が可能なメリハリのある仕組みに変えることに成功している。

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しかし、その一方でリストラには踏み切らないものの、賃金制度を抜本的に変革することもしないで、意図的に中高年の賃金を引き下げている企業もある。大企業の人事制度変革のコンサルティングをしているコンサルタントはこう指摘する。

「現在の年功的な賃金体系を導入している企業の中には、(その仕組みを一部微調整することで)社員が一定年齢になると実績や評価に関係なく、2ランク降格させて給与を2割程度下げる、といったケースもあります。給料が50万円なら40万円なる。表向きの理由は、『彼は仕事内容が変わりました』『役職を降りたから』といったことになっていますが、実際に本人に私たちが聞き取りをすると、部下の面倒を献身的に見るなど以前と同じように仕事をしている。そういう(中途半端な賃金体系の)ケースは少なくありません。この背景にあるのは、年功による積み上げ給的な賃金構造の放置です」

▼経営者が根本的な賃金制度改革をサボる理由

わかりやすく言えば、経営層の「サボり」によって、バブル世代以降の社員が不本意な減給や降格、リストラの憂き目にあうこともあるのだ。

賃金制度改革を実施しようとしないのはなぜか。

「賃金改革をしても50代の既得権が残り、急激に減らすことは困難」とは、前出の労務構成の是正でリストラを実施した大企業の人事部長だ。

聞けば同社では、リストラと同時に新規事業を含めた事業構造改革に着手しているという。実はこれは、もうひとつのリストラと呼ぶべき内容だ。人事部長は言う。

「伝統ある企業で何十年も同じ仕事をしてきた50歳、55歳の人たちに、今後新しい価値を生み出す仕事をしようと言っても難しいでしょう。逆に、新しいことをやろうとすると、抵抗勢力にならざるをえない。そうであれば転進してはどうかという提案です」