候補者のことを知っていると思い込みすぎない

米国の出版社マグローヒルには社員が自分のプロフィールをオンラインで紹介でき、経験や関心にマッチする仕事があったら自動的に知らせてもらえるシステムがある。こうした仕組みのおかげで社内昇進や横の異動が活発に行われているのである。同社が社内で人材を異動させる際は、まず一定の基準に基づいた面談を重視している。

同社の人事部高等教育部門専門職・国際ビジネス担当副社長のドナ・ドーンは、「マネジャーたちに、すべての社内候補者と意味のある面談を行うように指導している」と語る。ドナの同僚で人事部学校教育部門担当副社長のメアリー・エレン・バライティスは、異動候補者の選定はマネジャーが行う決定の中でも最も重要なものだと力説する。マグローヒルの人事部は、マネジャーに対し、異動候補者の過去の経験について詳しく聞き、仕事のビジョンを尋ねるなど厳しい面談を行うよう求めている。

先ごろ、メアリー・エレンとドナの担当分野を統括するポジションが新設された。社内で希望者を募集したところ、2人が手をあげた。ひとりはメアリー・エレンの部下のジョシュ(仮名)で、もうひとりはドナの部下のレベッカ(同)である。人事部トップはドナとメアリー・エレンにそれぞれ相手の部下と面談をするよう指示した。

ドナもメアリー・エレンもそれぞれの部下と密接に働いていたので、自分の部下こそが異動先で成果をあげると確信していた。が、2人とも相手の部下については表面的にしか知らなかった。そこで、彼女たちは候補者の職務経験や新しいポジションで遭遇しうる状況への対処の仕方などを中心に面談を行った。

すると思わぬ発見があった。2人とも相手の部下を思った以上に理解していなかったことがわかったのだ。面談後、ドナとメアリー・エレンは、ジョシュとレベッカどちらでも問題ないという考えで一致した。

2人のマネジャーはこの経験を、社内候補者に対する面談がどれほど勉強になるかという教訓として受け止めたという。

(翻訳=ディプロマット)