国の指定難病のひとつである潰瘍性大腸炎。2016年の患者数は18万人超。この20年で5倍以上に増えている。たびたび症状が「再燃」することで知られているが、1998年に寛解を迎えて以来、一度も再燃していないという医師がいる。これまで100人以上の寛解をみてきたという西本真司医師は「治療法はひとりずつ違う」と解説する――。

ステロイドに頼ると自然治癒力が低下する

「潰瘍性大腸炎」は国の指定難病のひとつです。このため「治らない病気」と思われているのですが、寛解(病状が治まっておだやかであること)を迎えることは不可能ではありません。私は1991年、29歳のときに発症しましたが、約7年をかけてさまざまな療法を試し、寛解を迎えることができました。今日まで一度も再燃(治まっていた病状や症状が再び悪化すること)していません。どのように治療したのか。ここでご紹介させてください。

西本真司・西本クリニック院長

最初に潰瘍性大腸炎を発症したとき、私は、研修医として熊本赤十字病院に勤務しており、特にその前の月はほぼ24時間、働きづめの毎日でした。ときどき自分の体調がすぐれないことは気づいていましたが、救急対応をしている病院だったので、患者さんがひっきりなしに訪れます。自分のことなど二の次で仕事に没頭していました。だましだまし働き続けていたのですが、ついに倒れてしまい、潰瘍性大腸炎との診断を受けました。

この病気の怖いところは、再燃を繰り返すということです。治療で改善はされるのですが、2度、3度と再燃を繰り返し、そのたびに症状が重くなっていきました。

最初の治療の時から、私はステロイドの使用をできるだけ避けたいと考えていました。その理由は、ステロイドに頼ることで自然治癒力が低下し、ステロイドの服用をやめられなくなるかもしれないからでした。ある医師からは、「ステロイドを使わないと99.99%治りませんよ」と言われました。たしかに当時の医療現場では、中等度の全大腸炎型の潰瘍性大腸炎の場合、ステロイド使用は常識でした。でも、私はどうしてもステロイドは使いたくなかったのです。

幸い担当医の理解があり、腸の炎症を抑えるサラゾピリンと経口栄養療法を中心とした治療を3カ月ほどして、改善しました。ところが、2年後に再燃してしまったのです。

潰瘍性大腸炎は、一日に何十回もトイレに行きたくなる病気です。私の場合、多い時で一日40回くらいトイレに駆け込んでいました。夜中でも頻繁にトイレに行きたくなるので、熟睡もできません。夜寝られないと、ボディーブローのようにメンタルに影響します。2度目に入院した時はひどく落ち込みました。また、食べてもすぐに下してしまうため、IVH(中心静脈栄養)だけで栄養を補給する生活で、食べられないことのつらさを実感しました。

1回目の入院時と同様、2度目も「ステロイドを使いたくない」と、ステロイド以外の治療を選択していました。そうして、私は「再燃」と「小康状態」を何度も繰り返しながら入退院を繰り返していたのです。

ある意味、医者である自分の体が実験台でした。どうしても治したいという強い思いを持って、西洋医療だけでなく、代替補完療法を取り入れることにしたのです。