顧客からの電話対応などの理由で、予定した時刻に出席者が揃わないと、会議の開催が遅れてしまう。特に上席の管理者が遅刻すると、会議がスタートしないこともある。会議での報告事項や審議事項に必要とされる時間をあらかじめ設定していないので、予想以上に審議が長引く。会議のための資料は大量に準備されるが、参加者の多くはそれらを目にするのは会議が始まってからであり、資料内容の確認に多くの時間がかかる。

時には、報告や審議に必要な資料がととのっていないため、次回以降に報告や審議が繰り延べられることもある。それよりも何よりも、審議を経て決定を行うのではなく、その前さばきとしての説明のために会議の場が利用されることも少なくない。

上記のことが日常化している企業では、間違いなくホワイトカラーの生産性は極めて低い。意思決定に要する時間が長くなればなるほど、生産性は低下するからである。ただ、生産性よりもわが国企業の会議で重視されていることがある。それは、情報共有である。会議参加者の中には、審議される事項に直接関係のない者が会議メンバーとなっている場合もある。

彼らは会議に出席していなければ、担当業務のために時間が確保できるにも関わらず、会議の場にやってくる。それでも、良いのである。会議を通じて情報共有化レベルが上がると考えているからである。自分の業務に間接的であったとしても関連する情報には、触れておきたいという人も多い。

大量に飛び交うメールの“CC”は読まれていない

情報共有化は何も会議に限っていることではない。大量の社内メールが毎日送られてくるが、その中には、受けて宛てに“To”として送られてくるものと“CC”で送られてくるものがあるが、一度、その比率を一カ月分計算して見るとよい。圧倒的にCCメールが多いだろう。そして、CCメールの大部分は、情報共有(「ご参考までにお目通しください」)を目的としている。

しかし、CCメールのすべてを読むだけで時間が浪費される。自分の時間を確保するために、大量に舞い込むメールを読むべきものと無視するものに仕分けする人も多い。しかし、仕分けに相当の時間がかかる。CCメールの送り手は、宛先人物全員がメールを読んでくれると考えるが、実はそうではない。そのため、「送った」「読んでいない」という不毛の問答に時間を割かなければならなくなる。どちらにしても、一方的に送りつけられるCCメールでは情報共有は達成できないのである。

会議運営が適切に行われないと、会議で時間が取られるだけでなく、会議前後にも準備や対応で時間を取られる。そして会議によって奪われた時間を取り戻すため、長時間労働が必要となる。無駄な会議があることで、事態は予想以上に深刻なものとなっているのである。

取締役会が必ず正午に終わる小野薬品工業の工夫

それでは、どのように会議を進めればよいのだろうか。以下に要点をまとめておく。

1.会議の生産性に関わる測定尺度を設定し、生産性向上が進んでいるかどうかを確認する。測定尺度とは、例えば定時に参加予定者全員が着席している比率、審議事項が実際に決済された割合、会議中の中途退席者数(トイレや業務連絡電話での一時中座も含む)などが考えられる。

2.会議は情報共有の場ではないことを周知徹底する。情報共有は、会議前に完了させておき、会議では、審議に集中し、的確な意思決定を迅速に行う。審議に関連する資料がととのっており、会議での口頭説明が不要な案件もある。これらについては、即座に審議に入る。情報共有を図りたければ、CCメールのようなプッシュ型の情報提供ではなく、プル型(ほしい情報は、各自が自分で取りに行く)に重点を置くとよいだろう。