旧三部作のファンを喜ばせる内容に
改めて『最後のジェダイ』を観てみましょう。おそらく若い観客は、「なんだか画面が古臭い」と感じるはずです。これは40年前のメカデザインや衣装のテイストを律儀に踏襲しているだけでなく、意図的に旧三部作の「あの時の画面タッチ」を再現しているからです。
さらにCG一辺倒ではなく、なるべく実景の屋外ロケや実物大のセット、パペット(操り人形)などを使って撮影している点や、昨今ほとんどの映画が採用しているデジタル撮影ではなく、大半をアナログで、すなわちフィルム撮影で作っている点なども、良い意味での「昔っぽい見た目」に拍車をかけています。
旧三部作の引用やオマージュもたくさん出てきます。アメコミ映画にも、シリーズ過去作を見ていれば「ニヤリ」とできるシーンはよく挟まれていますが、SWはその比ではありません。旧三部作に登場したキャラや小道具、旧三部作の意趣返しのようなシーンやセリフが、メジャーなものからマイナーなものまで、観客の注意力に挑戦するかのごとく登場するのです。
『フォースの覚醒』ほどのフィーバーはなかった
ここまでの解説で、いかにSWが間口の狭いシリーズであるかがわかったと思います。だからこそ、アメコミ映画のように末広がりの興収とはなりませんが、逆にこうも言えます。
盤石のコアファンに支えられているからこそ、初週末の興収は“たったの”1割ダウンで済んだ、と。
しかも、この話には続きがあります。興行ランキングは土日の観客動員数で決まるため、2作の興収も同じく初週末土日の数字で比較しましたが、実は『フォースの覚醒』は金曜日が初日、『最後のジェダイ』は木曜日が32館限定の前夜祭興行で金曜日が初日でした。そのため、土日興行のみの数字は先述の通り「1割減」なのですが、公開から日曜日までの動員をすべて「初動」としてカウントとすると、『フォースの覚醒』は初動3日間で16億1934万円、『最後のジェダイ』は初動4日間で16億1717万円。集計日数が異なるのであくまで参考値とはいえ、初動で大くくりすれば、2作はほぼ並んでしまうのです。
以上を踏まえて、2年前を思い出してください。2015年12月、日本国内にはSWフィーバーが吹き荒れていました。前作(第6作)から実に10年ぶりの新作。2019年まで続く新たなる三部作の第一章。監督は生みの親であるジョージ・ルーカスからJ・J・エイブラムスにバトンタッチ。シリーズ屈指の人気キャラであるハン・ソロが32年ぶりに登場と、SWファンや映画ファンがテンションを上げざるを得ないワクワク感に満ちていたのです。
メディアでの露出もすさまじいものでした。シリーズではじめてタイトルに「エピソード7」といったナンバリングを入れなかったことで“続編感”が薄れ、「今までのシリーズを観てなくても楽しめる!」といった紹介の仕方も多く見られました(もちろん、そんなことはないのですが)。
印象的だったのは、初の女性主人公だったからか、女性誌や女性向けメディアでも報道が相次いだことです。確かに「強い女性が運命を切り開く」という切り口はありましたが、20~30代の女性に「おっさんホイホイなSF映画のパート7」をいきなりオススメする姿勢には、感心するとともにちょっとあきれた次第です。