熱狂度は1割どころのダウンではないはず

しかし今回の『最後のジェダイ』に、『フォースの覚醒』ほどの喧騒はありませんでした。10年ぶりだった前作と違い、わずか2年ぶりの続編。しかも1年前の16年12月には外伝的ストーリーである『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』が公開されており、待望感や新鮮味は明らかに薄まってしまっています。周囲でのSWファン、映画ファンの熱狂度も、『フォースの覚醒』ほどではありませんでした。2年前、あれほどSNSなどで熱狂していたのに、「今回は観る気がしない」と手のひらを返していたオジサンもいたほどです。

『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』の日本版宣伝ポスター

特にSWファンでも映画ファンでもない人は、さらに興味が薄れているでしょう。あくまで筆者周囲の話ですが、2年前の『フォースの覚醒』では、SWファンの友人に連れられ、お祭り気分で土曜日の劇場に足を運んでいた20代女性が、「今回はDVDでいいかな」と言う始末です。名実ともに、いかに2年前が「お祭り」だったかがうかがえます。皆さんの周囲にも、そういう方が結構いるのではないでしょうか。

このような熱気の低下が、(体感ではありますが)1割減どころではなかったことを考えれば、土日の興収が前作比“たったの”1割ダウンにとどまり、かつ初動がほとんど変わらなかったのは、むしろ大健闘と言えるのではないでしょうか。要は、前作『フォースの覚醒』を宣伝の勢いに乗せられて「よくわかんないけど流行ってるから最初の土日に観た」層が、“たった”1割しかいなかった、ということです。

「観るべき人に一人残らず観せる」ことが重要に

かつて映画興行という商売は、「事情をよくわかっていない人も、力技の宣伝で劇場に来させようぜ」という体育会的発想で回っていました。もともとその作品に興味のない人、本来のターゲットではない人もメディアの物量攻勢で強引に興味を持たせる、例の手法です。大作日本映画が公開される数日前から、出演者たちがたくさんの情報番組やトーク番組に朝から晩まで出演し続けるのは、その典型です。

しかし、そのような宣伝の効果は、限定的なものになりつつあるようです。それを示す格好の事例が、『最後のジェダイ』公開の1週前、12月9日~10日のランキングに現れていました。

この週は、東宝が正月映画として製作した大作『DESTINY 鎌倉ものがたり』が公開されましたが、1位を取れませんでした。公開前の数日間、主演の堺雅人と高畑充希をテレビで見ない日はないというくらいプロモーション稼働が精力的だったにもかかわらず、です。1位は、『DESTINY』より30館ほど公開館が少ない『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』でした。観客はライダー好きの男児とマニアな大人。一見さんとは無縁の、「観るべき人に一人残らず観せる」べき作品というわけです。

現代の消費者はマスコミ以外にもたくさんの情報源を持っているので、力技の物量作戦が通用しづらくなっています。いま映画の宣伝は「誰でもいいから、ちょっとだましてでも動員する」ことではなく、「観るべき人に一人残らず観せる」ことのほうが重要になっているのです。

つまり、宣伝の勢いに乗せられて「よくわかんないけど流行ってるから土日に観た」層が“たったの”1割しかいなかった最近のSWは、「どんなプロモーションをしても来る人間は来る。来ない人間は来ない」という、ここ数年のある種の映画に適用されていた宣伝上の不文律を、明確な数字をもって可視化した、とも言えるのです。

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