仕事の場合はサッカーの試合よりも長丁場になると思いますので、集中力の強弱をコントロールすることは重要なスキルになると考えられます。もしかしたら、長時間の仕事では50%ではなく、10%くらいを維持するほうが長く集中力を発揮できるのかもしれません。そうすれば、ぷっつりと集中が切れて大きなミスをすることを防げて、全体的に質の高い成果を生むことができると思います。

「リズム」が集中をつくる

集中力を高めるには、リズムを意識することも効果的です。「遠藤がいるとチームのリズムがよくなる」「遠藤が入ってから試合運びが安定した」といった声を聞くことがあります。

「あの選手が入るとリズムがよくなる」と評される選手は、他のチームにもいます。中村俊輔選手、中村憲剛選手など司令塔タイプに多いようです。

そのような評価を受けるのは実績や経験によるイメージの部分も大きく影響しているでしょうし、こうすればいいという絶対的なコツもありません。ただ、僕の場合は、どんな試合でも安定したパフォーマンスを発揮すること、そして、試合の「流れ」を読んでプレーすることを心がけています。

たとえば、チームが試合で負けているとき、早く追いつこうとあせって、チーム全体が前へ前へと行きすぎてしまうことがあります。残り時間がわずかなら前がかりになるのもわかりますが、まだ十分に時間が残されているのにもかかわらず、前がかりになったら逆効果です。じっくりボールをまわしたほうが効果的であるにもかかわらず、やみくもに前線にボールを放り込めば、相手の思うつぼです。

そのため、全体に前に行きすぎていると感じたら、わざと僕のところでゆっくりボールをまわして、チームに「あせらずにいこう」とメッセージを送ることがあります。そのメッセージが伝わると、チーム全体の集中力もアップし、いい攻撃につながることが多いのです。そうした流れを読んだプレーが、「遠藤が入るとリズムがよくなる」という評価につながっているのかもしれません。