「リケジョ」の天国。倍率は2倍と意外に低い

そんな桜蔭の最大の特徴、それは理系女子の多さと、医学部進学率の高さである。長年中学受験専門塾を主宰し、都内の進学校の内情に詳しい矢野耕平氏は、桜蔭を「モンスターのような学校」と評する。

「桜蔭の東大合格者数は、近年50人から70人で推移しています。しかし、注目すべきは医学部合格者の多さです。17年には東京大学理IIIへ7人が合格していますが、全国の医学部を見ると130人が合格している(現役・浪人含む)。彼女らは東大理Iを十分合格できる実力を持ちながら、医者を目指すために他大学に進学しています。つまり1学年約250人中、半数は東大現役合格の実力を持つという、女子校でも唯一無二の存在なんです」

矢野氏の言葉を裏づけるように、桜蔭卒業生30~50代の職業を見るとトップには「医師」が輝いている。薬剤師や税理士、公認会計士、弁護士、裁判官、教育関係者、研究者などの職業も継続的に輩出しており、いずれを見ても「女子校=文科系」という先入観は覆る。

「世の中ではよく文系、理系と区分しますが、桜蔭の場合は文系:理系:医系で分けます。しかもその比率は1:1:1。他校と比べると圧倒的に理系が多い」

その傾向はすでに入試問題から表れているという。男子校顔負けの硬派な問題が並び、詰め込み式の知識のみならず思考力が試される記述問題も頻出する。それは他教科にもおよび、中学入試を受ける小学生に対し、ある年の国語の問題では東大入試で出た例文が出題されたという。

「倍率こそ2倍と低めですが、そもそも実力を持った子しか集まらないので、間違っても運で合格できるような学校ではありません」