黙って遺言書を書き換えていた

ところが、念のためと思ってその遺言書を確認したところ、そこには桂子と千夏のことはひと言も書かれていなかった。斉藤は亡くなる前に、桂子に黙って遺言書を書き換えていたのである。正妻との間に娘ができて、そちらに愛情が向いてしまったのだ。桂子は裏切られたのだった。

許せない。怒った桂子は店のお客だった弁護士に相談したが、あいにく法律は愛人を守ってくれないことがわかる。しかし、子供は違う。父子関係が認められれば非嫡出子にも嫡出子と同等の権利があるという。

そこで、千夏の認知訴訟を起こすことにした。父親が死んで3年以内なら死後認知の手続きができると教えてもらったのだ。

DNA鑑定の結果を受け、斉藤と千夏の父子関係が裁判で正式に認められると、続いて桂子は斉藤家を相手に、千夏の財産相続を求める裁判を起こした。

斉藤に愛人や隠し子がいることを知らなかった遺族には寝耳に水だが、この千夏の請求はもちろん認められ、斉藤家は財産の一部を処分して千夏に支払った。千夏がいてくれたおかげで結果的に桂子側の全面勝利となったのである。

もし斉藤が、“たとえ隠し子であろうと父親としてできるだけのことをしてあげたい”“弱い立場の愛人だからこそ、大事にしなければいけない”という気持ちを最後まで失わなければ、死後、遺族に迷惑をかけることも、妻に大きなショックを与えることもなかっただろう。

また、こうもいえる。それだけの甲斐性がなければ、愛人や隠し子など、そもそも持つべきではないのだ。

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(写真=Martin Barraud/gettyimages)